11 守ったのは

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『さあ! 夫を愛する妻を演じるのよ!』 『将来、ボコボコにする予定のレクスに愛の告白? 冗談じゃないわ!』  ユリアナであろうとする私と大魔女の私が、バチバチ戦っていた。  戦っている間に、クリスティナは次の手に出ていた。   「皇帝陛下。私、気分が……」  クリスティナが足元をふらつかせ、倒れそうになったのをレクスが支えた。  支えたレクスは、こちらをちらりと見て、私を責めるような目をした。  ――レクスは妃からの愛の告白を待っていたの? 「平気か?」 「申し訳ありません……」  クリスティナの瞳がレクスを捕らえ、【魅了】の魔法を使用する。  魔女が見つけたレクスの心の隙。  それは『孤独』だ。    ――そう……。レクスの心の隙は孤独から生まれたものだったのね。  父と兄を殺し、一人になったレクスが迎えた妻。  家族となるはずが、妻とは不仲で拒絶される日々。  孤独な皇帝の心の隙に入り込んだ卑劣な【魅了】の魔法は、やがて国を滅ぼす。  私と弟子たちによって、倒される日がルスキニア帝国最後の日となる。
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