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暫くしてキリリが戻って来た。困惑した表情をしている。
「リョウが部屋にいないんだ」
「トイレなんじゃないか?」
「トイレに行ったけど、いなかった」
「じゃあ、どこだろう」
「朝の散歩かなー。その辺をうろついてるかも知れないから、ちょっと外を見てくるよ」
そう言って、僕は玄関に向かった。
窓の外を眺めていて、僕は思った。雨上がりの山の朝、散歩すればきっと気持ちがいいだろうな。だから、リョウが山の朝の新鮮な空気を吸いたいと思って、散歩に出かけたとしても頷ける。もし、そうだとすれば、リョウを探している僕に会ったら、彼は、「気持ちいいですね」と、ぼそっと呟くように挨拶するかも知れない。
玄関にリョウの靴は無かった。やはり、散歩に違いない。そう思って、ドアを開けてポーチに立ったけど、裏切られた。別荘前のぬかるんだ地面には、リョウの足跡どころか獣の足跡すらも残っていなかった。
裏玄関に回った。しかし、ドアにはしっかりと鍵とドアチェーンがかかっていた。
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