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「じゃあ、リョウはまだ別荘にいるってことか?」
僕の報告を聞いて、マサが言った。
「昨夜は大雨だ。そんな中、わざわざ出て行かないだろう。出て行くとすれば雨が止んだ早朝だろうけど、外には何の足跡も残ってなかった。しかも、裏側のドアには鍵がかかってたんだ」
靴が無かったのはなぜなのか、という疑問は残るけど、足跡が無い以上外には出ていないのだろう。
「手分けして探そう」ドクがエプロンを壁のフックに掛けながら言った。「僕は自分の部屋と風呂場を探す。君たちは二階を頼む」
一階は、ダイニングキッチンと風呂、トイレ、それにドクの寝室がある。二階には寝室が四室あって、ドクを除く四人に割り当てられている。
僕たちはそれぞれ自分の部屋を調べることにした。
「いいか、ベッドの下も見ろよ。それから窓の鍵だ。窓から出たかもしれないからな」とマサが指示する。
「ここは二階だ。飛び降りれば足を挫く恐れがあるし、下手すれば大怪我だ。まさか、そんなことしないだろうけど、一応見とくとしよう」
僕が言った。
「びびりのリョウが飛び降りるわけないぜ」
キリリが小馬鹿にしたように言うと、自分の部屋に歩いて行った。
僕の部屋には人の気配がなかった。ベッドの下を覗いた。誰もいなかった。窓の鍵はちゃんとかかっている。
「いたか?」
廊下に戻ると、マサが声をかけてきた。
「いや」
僕は首を横に振る。
「もう一度、リョウの部屋、探してみるか」マサが言った。「案外、また部屋に帰って、ベッドで寝てたりしてな」
けれど、僕とマサが部屋に入ってみると、ベッドでリョウは寝ていなかった。もちろん、部屋のどこにもいない。
「窓だ」と言って、マサは窓に駆け寄る。「鍵がかかってるぞ。てことは、窓からは出てないな」
僕とマサは再び廊下に戻った。
「キリリ、そちらはどうだった。リョウの奴いたか?」
マサがキリリの部屋の半開きになったドア越しに聞いた。が、返事がない。
「キリリ、聞こえたのか? どうだった?」
と言いながら、マサはキリリの部屋に入って行く。僕もマサに続いた。
「キリリいないぜ」
「キリリも消えたってことないよな」
「まさか。キリリの奴、先に帰ったんだぜ」
念のために、僕たちは二人そろって二階の四つの寝室を全て調べた。リョウもキリリもいなかった。
キリリは自分の部屋を調べた。けれど、誰もいなかった。そのことを僕とマサに伝えることなく帰った。マイペースなキリリなら、そんなこともあり得ると思った。
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