そして誰もいなくなった?

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 食堂に戻ってみると、ドクが待っていた。テーブルの上には飲みかけのコーヒーカップが載っている。 「その顔を見たところ、だめだったようだな」  ドクが言った。 「キリリは戻ってないのか?」  マサが尋ねる。 「いや、戻ってないけど」 「戻ってないって? ひょっとすると、キリリも消えたのか。確かめてくる」  僕は玄関に走った。ドアを開ける。地面に足跡は残っていなかった。そして、裏玄関には鍵とドアチェーンがかかったままだ。  リョウに続きキリリもいなくなった。しかも、二人とも別荘から出ていない。一体どこに行ったんだろうか。  謎を抱えて、僕は食堂に戻った 「どうやら、キリリもいなくなったようだ」 「ふん、あんな調子のいい奴、いなくなってせいせいしたぜ。人に罵倒されてもヘラヘラと笑っていてよ。俺だったら、相手にガツンと一発かましてやるな。それに、リョウの奴だって気に入らないな。いつも、小声でぼそぼそ喋ってよ。何考えてんだか分からない奴。二人ともいなくなってせいせいしたぜ」  悲しむかと思ったけれど、マサの反応は逆だった。 「キリリのような性格の方が、角が立たなくていいんだよ。コミュニケーションが上手くいくんだ」  撲が反論する。 「ふん、コミュニケーションか。お前もコミュニケーションが苦手だったな。お前は理詰めで嫌がられてるんだ」 「そんなことは……」 「図星だな。俺はお前のように冷静に物事を見る奴も好かんな。物事を考えて分析して、それが何になる。嫌な奴はぶん殴り、嫌な物は壊せば解決するんだよ」 「そんな短絡的思考は解決にならない」 「解決するんじゃない。気持ちがスカッとするかどうかだ」  マサは乱暴だ。でも、僕はマサのことが嫌いじゃない。根は優しい奴で、僕がいじめられていると、よく助けに来てくれたから。もちろん、嫌な奴はぶん殴ってくれた。 「好き嫌いはおいといて、二人が消えたことを考えよう」  ドクが僕たちをたしなめた。こんな時に言い争ってる場合じゃないということだ。  マサはまだ何か言いたいようだった。が、口を閉ざして椅子にどっかと座り、不貞腐れたように腕を組んだ。  部屋に暫く沈黙が続いた。
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