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「俺、閃いたんだけど」
沈黙をマサが破った。
「ドク。お前の部屋に二人がいるんじゃないか? 朝早く、お前の部屋にリョウが隠れる。それから、俺たちが二階を探してる間に、キリリが隠れるんだ」
「何のためにそんなことするんだ?」
ドクが聞き返す。
「それはな、ドッキリなんだ。俺たちを驚かすつもりなんだろ。プラカード持って現れるんじゃないか? 『鬼さん、見つけられなくて残念でした』とかな。俺、お前の部屋見て来るぜ」
そうマサは言い放つと、食堂を出て行った。それがマサを見た最後だった。
「マサ遅いな。マサも消えちまったんじゃないだろうな」
ドクの部屋を調べただけなら、とっくに戻って来てもいいはずだ。
「見に行こう」
僕たちはドクの部屋に行くことにした。
ドクの部屋にマサはいなかった。もちろん、リョウもキリリもいなかった。
ここは一階だ。二階の部屋と違って、ここから外に出ても怪我をすることはない。だから、外に出ることは可能だ。けれど、窓の鍵はしっかりとかかっていた。三人は消えたんだ。
いや、待てよ。本当に三人はいたのだろうか。もしかすると、もとから三人はいなかったんじゃないか? どうもそんな気がするが……。
そうか! 不意に僕は分かった。三人がなぜ消えたのかが分かった。
「分かったんだ。三人がなぜ消えたのか」僕はドクに言った。「初めから三人は存在しなかった。三人とも僕だったんだ。僕が生み出した人格だったんだ」
「ユウキ、気付いたのか。君は解離性同一性障害いわゆる多重人格だったんだ。リョウ、キリリ、マサは君が生み出した人格だったんだよ。みんな君を助けるために現れた人格なんだ」
「だけど、彼らは消えてしまった」
「君が彼らを必要としなくなったからだ。彼らを頼らなくても大丈夫ということだ。一人でもやっていけるということなんだよ」
「僕以外の人格を消してくれたのは君なんだろう? そうだろドク。いや、ドクター」
「そう考えてもらってもいいけど……」
なぜか歯切れが悪い答え方だ。
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