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《8》
親跡さんの車に乗せられて向かった先は、格式が高そうな中華料理店だった。
「ここのフカヒレ、美味いんですよ」
通された個室の真ん中に中華料理でお馴染みの回転式のテーブルがドーンと置かれていた。
怖ず怖ずと席に着く。
「フカヒレ……ですか?」
フカヒレもどきなら食した事はある。
けれど、本物は食べた事も目にした事もない。
それ以前にフカヒレって、確か高級食材だったような。
「もしかして、苦手だったりしますか?」
親跡さんの問いに首を左右に振る。
「実は食べた事がなくて……いや、それ以前にこんな高そうな所でフカヒレなんて……」
きっと万からするだろう。
「私、持ち合わせが……」
大人らしからぬ台詞をゴニョゴニョ呟いていると、親跡さんが「ははっ」と笑う。
「こちらから誘ったので、朝比奈さんはそのような事は気になさらないでください」
何と、ここは親跡さんが持ってくれるという。
「そういう訳には……」
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