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「あの、先日はご馳走様でした。あと沢山のサンプルをありがとうございます。職場の皆と試飲し―――…んっ…」
言葉の途中で親跡さんの大きな手が私の口を塞ぐ。
「今日は仕事の話はナシですよ?」
ついさっき聞いたばかりの台詞を繰り返されてハッとする。
「………すみません…」
「いえ、行きましょうか?」
親跡さんに促されて歩き始めてみたけれど、これからどこへ向かうのかは分かっていない。
ただ、親跡さんの口角が引き上がった横顔から、彼が私との外出を喜んでいるらしい事は分かる。
「今日はお時間頂けて嬉しいです」
「あ、いえ…どうせ暇を持て余したいつもの休日を過ごしていただろうから、お声掛け頂けて嬉しいです」
「ははっ、仮に社交辞令だとしても気分が上がります」
歩きながら時折甘い顔でこちらを見てくる親跡さん。
こうまで露骨だと、照れを通り越して居心地が悪いというか……
ありがたい事なんだけれど。
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