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「いや。あれはただ逃げているわけではないな」
「何故、わかる?」
「彼の目を見ればわかるさ。まだ、こちらに助けを求めていないし、何より……微塵も諦めていない」
むしろヨゼは、ガスペロクの様子を観察しているように見えた。
「キシャー! シャー、シャ……」
「そろそろかな」
突然、ガスペロクの動きが鈍り始めた。様子がおかしい。ヨーデルはもしや、と思った。
「ハク。少しスピードを落として」
ヨゼに従い、ハクは走る速度を下げた。ヨゼはハクの背に乗ったまま、弓を構える。
「ウォーウルフに乗ったまま矢を射る気か」
もしそれができるなら、ヨゼの弓の腕は大したものだ。動いている相手を射抜く。それだけでも狩人としては十分なのに、揺れる背の上で矢を射ようとしているのだから。
狙いを定め、ヨゼが矢を放つ。矢は見事にガスペロクの腹や顔に命中した。
「ここまでだな」
ヨゼの実力は申し分ない。ヨーデルはそう判断した。もう討伐を中止してもいいだろう。すると、ガスペロクが倒れた。よく見ると、眠っている。
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