316人が本棚に入れています
本棚に追加
いつでも好きが溢れてる(後編)
俺がキスすると動揺して可愛くなる各務くんはそこにはおらず、射抜くような視線で俺を見下ろしてくる格好良い各務くんがいた。
少し呼吸が荒くなってる気もするが、それもまた色っぽい。
「はっ、ほんとあんた質悪いな……頑張るつもりだけど、抑えられなかったらごめん。先に謝る」
「え? それはどういう?」
「……ああ、一応確認するけどおれが入れる側でいいよな?」
この期に及んで何を抑えるのだろうと不思議に思ったものの、それよりも俺が疑問に思っていたことをサラリと言われて驚いた。
役割分担。俺の勘は当たってたんだなと嬉しくなる。
以心伝心と言うか阿吽の呼吸というか。同じことを思っていたというのがなんだか嬉しい。
「ああ、それは、うん。あ、でも、その、特に準備とかはしてなくて、だからその」
最後まではできないかも、とモゴモゴと答えれば声ごと唇を奪われる。舌を絡めて刺激し合えば俺の息もあがってきた。
「はっ、ヤバ……最高っ」
「へ? なんで??」
「全部おれがやってあげるから、任せて……」
各務くんは身体を起こすと舌なめずりせんばかりの笑顔を浮かべ、俺にまたがったまま服を脱ぎ捨てた。
「んぁ……んっ…」
腹の中というか、お尻というか、を他人に弄られる感覚というのは想像を絶するものだった。
ベッドに座る各務くんと向かい合わせになり、腰が抜けそうなのをなんとか耐えつつ立膝で首に抱きつく。
必死にしがみつく俺の耳元で、各務くんはフー…フー…と先程から荒い息を繰り返していた。
無言なのはお互い様で、俺も変なうめき声をあげながら、ただひたすら抱きついている。
初めのうちはなんだかんだと話をしながらやっていたけど、今はもう呼吸音とヌチュヌチュって感じの俺の前と後ろを弄る音しか聞こえない。
宣言どおり各務くんにあれやこれやと準備され、なんかもう俺の思考はドロドロに溶けてしまっていた。
各務くんの指が腹の中のなんか良くわからないとこ、たぶん前立腺とか言うやつだ、を擦ったり、それと同時に俺のモノを扱く。
「あっ……まっ……ひぃっ!」
達しそうになるのにギュッと前を握られて絶頂を阻止される。そのたびに眼の前の熱い体にしがみつけば、同じくらいの力で抱きしめ返された。
ちなみにこれは意地悪されているわけではなくて、俺は既に何回かイッており、あまり達しすぎると体力が持たないからという配慮だ。
各務くんの気遣いが半端ない。だけど、あとどれだけこうしているんだろう? もう良いんじゃないだろうか?
俺は思わず身体に差し込まれている指を締め付けて、本数を確かめる。
結論から言えばまったくわからなかったけど三本入ってればいけるとか、ネットで見た気がする。さっき中で左右に広げられたりしたから二本は絶対入ってるはずだ。
各務くんのモノを入れるにはまだ狭いかもだけど、正直もう色々と辛い。
俺の行動に各務くんが息を呑むのが伝わる。
俺は各務くんの腕に手を添え身体から引き離した。
「ね、……もう……いいから」
そのまま各務くんから離れると仰向けに寝ころび足を開く。最初各務くんに希望された体勢だが、顔が見えるのは恥ずかしすぎて俺が断った。
だがそんなことは忘れたかのように俺は各務くんを見つめる。
実際この時の俺はいっぱいいっぱいで理性など殆どなかったのだと思う。
興奮で目を見開いている各務くんの顔のみならず、腹にくっつきそうなほどそそり勃った各務くんのモノまで、俺は舐めるように見つめてうっとりした。
ああ、本当に、俺のこと大好きなんだなぁ、と実感して心臓が高鳴る。
「も、へいきだから……かがみくんも気持ちよく、なろ?」
それが物凄く嬉しくて、俺は先程まで各務くんが一生懸命拓いてくれていた場所を指で広げて見せる。
「っ!! 〜~あんた、ほんとにそういうとこだからなっ」
「ふ、ぅぐっ……」
チッと各務くんが忌々し気に舌打ちしたかと思ったら、指なんかとは全然違う、熱くて硬くて凶悪な各務くんのモノがゆっくりとめり込んできた。
荒々しい様子からてっきり一気に押し込まれるかと思ったのに、態度とは裏腹にゆっくりジワジワと身体の中を侵されていく。
「ぅ、あっ……んんんっ!」
なんかそれがもう暖かくて嬉しくてどうしようもなくて、まだそんなに入ってないのに俺の身体は歓喜で震えが止まらない。
そんな俺をいたわるようにゆっくりと身体を押し進めながら、各務くんは俺の顔や首筋にキスをする。
「……っ、苦しくない?」
俺はこくりと頷く。たぶん俺より各務くんの方が苦しいだろう。
俺の準備でずっと我慢して、今も擦りたいのを我慢してる。
その証拠に呼吸もかなり荒いし汗も滴り落ちてくる。
気遣いしすぎるくらい優しくて可愛い俺の恋人。
雄々しく見下ろしてくる各務くんをうっとりと見つめながら、背に手を回して引き寄せると口付ける。
各務くんにもいっぱい気持ちよくなって欲しくて少し腰を揺らした。
「グッ。……はぁっ……マジ、もう、容赦、し……ねぇ、覚悟しろっ!!」
「あっ、んぁ、ぁあ、ん、んっ、ンゥ、アッ、ァアッ……まっ、はげッんっ、ンン」
俺の誘いに乗るように、我慢の限界に達した各務くんは犬みたいな低い唸り声とともに腰を激しく打ち付けた。ベッドが規則的に軋む音にも異様に気分が昂っていく。
大好きで、熱くて、求められて、気持ち良くて、優しくて、すごく……幸せ。
「ひぃうっ!」
次第に小刻みな動きになりゴチュンッと最後に深く打ち込まれ、俺の体が勝手に仰け反った。それを逃すまいと各務くんにきつく抱きしめられる。
「ほんと、……好き、悠希、愛してる」
はぁ、っと熱い吐息とともに囁かれた言葉にもうこれ以上跳ねることはないと思った俺の心拍数があがる。
「な、まえ……?」
「ん、悠希……」
「ひっ!」
さらに耳元で甘くかすれた声で囁かれ、ぎゅっと思わず各務くんに抱きついてしまった。
たぶん、初めて、呼ばれた……。
特に名前を呼ばれなくて不便なことはなかったから気にしたことはなかったけど。
ヤバい、これ、すごく、嬉しい……っ!
「ふっ……は、なに? 自分の名前、好きなの?」
思わず感情に身体が反応して各務くんに絡みついてしまった中を、各務くんの再び固くなリはじめたモノがユルユルと動く。
「ふっ……ん、だっ、て」
「可愛い……悠希……好き……」
各務くんは再び呼吸を荒くしながら俺の名前を呼び中を擦り上げる。
「ん、ん……俺も、好きだよ…………………まこと……」
顔が見えないように身体を密着させるように抱きしめて、俺も精一杯甘い声で各務くんへ想いを伝えた。
「……〜〜っ!」
「っ? え? な、なに!?」
その瞬間、腹の中の熱が一気に膨張した。
「あっ、まっ、えっ、ヒャッ……んんっ……」
その後のことは正直良く覚えていない。
口は各務くんの肉厚な舌に侵略され、声も呼吸も唾液も貪られながら、いやもう全身を食べられるような錯覚に陥りながら、俺達は何度も身体をつなげた。
水を得た魚、或いは飢えていた肉食獣が餌を得たとでも言うべきか。
初めてにしては凄かったのではないかと思う。比べようがないのでなんとも言えないのだけど。
結局俺たちがシャワーを浴びることができたのは朝方だ。各務くんがバスタブにお湯を張ってくれて俺を介助し入浴させてくれる。
さすが名の知れたホテルというべきか、バスタブも洗い場もビジネスホテルとは比べ物にならないくらい広かった。
「うう、おしりになんかまだツマってる感覚がする……」
「あんたのそれは煽ってるのか空気読めてないのか、どっち?」
「うっ、ただの素直な感想です……」
湯船に浸かる俺の顔を、各務くんが洗い場から真剣な顔で覗き込んでくる。
濡れ髪の各務くんはなんとも大人っぽくて男らしくていやらしい。
つい先程までのあれやこれやも相まって、俺の身体がうずうずしてしまう。
「あ、そういえば、各務くんて俺の名前覚えてくれてたんだね」
「はぁ?」
程よい湯加減なうえに優しい香りの入浴剤に包まれフワフワとした心地よさの中、ふと最中のことを思い出しつつ思わず顔がにやけてしまった。
ちなみに俺の名前は蓮沼悠希という。
「あんたこそ……よくおれの名前知ってたよな」
「前に部屋で郵便物見たことがあったから。読み方間違ってなくてよかった」
好きな人に名前を呼ばれる、ただそれだけの破壊力のなんと高いことか。そして気付けば俺も各務くんの名前を呼んでいた。
真琴くん。各務くんの名前だ。各務くんは名前まで可愛い。
「……間違ってたら大事故だろ」
「萎えたら大変だもんね。……ねぇ、もう呼んでくれないの?」
各務くんの前髪をちょっと引っ張って甘えて見せる。こんな事ができてしまうほど甘々な雰囲気が正直怖い。明日思い出したら恥ずかしくて俺はショック死してしまうのではないかと思うが、まあ、拒絶されて今殺される訳では無いので良しとする。
俺の言葉に各務くんがゴクリと唾を飲むのが見えた。
「…………ここでまたヤっていいなら、呼ぼうか?」
低く、それはもう低い声で各務くんが呟けば、照れることなくそれはもう雄々しい顔で微笑みを浮かべる。
ゾワリと俺の全身が粟立った。
「す、すみませんでした」
流石にこれ以上ヤられたら尻が壊れる気がする。あと腰が持たない。
俺はこれでも足腰は強いほうだと思ってたけど、他人に好き勝手揺すられるのがこんなに負担がかかるなんて知らなかった。
「……ほんとあんた、マジでそうやって煽るの止めて。こっちは大変なんだからな」
はーっと深い溜め息をつきつつ、力なく項垂れてしまった各務くんを元気づけたくて、俺は思わず手を取り指先に口付ける。そのまま握っていれば。
「~~あんた、なぁ! ほんともう、我慢ならねぇ!」
各務くんにキレられた。
再び元気づけるのに成功してしまった俺は、その後まさかのそれ専用のホテルへ連行され、デート二日目は観光を諦め各務くんの愛を受け止め続けることになった。
よろよろとした足取りで帰宅する俺を送り届けた各務くんは意気揚々とバイトへ向かう。
まさかここに来て年の差を実感するとは思わなかった。大学生……すごい。
きっとこれからも各務くんとは年の差を感じたり、色んな発見があるのだろう。
だけどその度に、俺は彼を好きになるに違いない。
強引で欲望まみれの可愛い恋人の姿を思い出せば、俺はトキメキ過ぎてまたフローリングをゴロンゴロンと転がるのだった。
(本編・終)
最初のコメントを投稿しよう!