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猫パンチを喰らった。
その事実を理解するまで数秒かかって、私の上に猫がいることを確認する。
「おはよう」
「ニャー」
やっぱり、喋れなくなっていた。けれど「猫がいる」という事実だけで幸せなのだと感じる。
「ご飯、作るね」
そう言って布団から出てテレビをつけ、朝ごはんを作り始めた。「四月二日、朝のニュースです」とテレビが喋り始める。
「ボクのも忘れないでくださいにゃ」
その言葉に、一瞬戸惑った。
「今日も、喋れるの?」
「昨日の話は嘘ですにゃ。昨日はエイプリルフールだったですにゃ。ボクは今までずっと喋ることができたですにゃ」
「じゃあ、なんでずっと喋れないふりをしてたの?」
「猫が喋ったら困惑して飼わなくなっちゃうかもしれなかったですにゃ。だから、エイプリルフールになって急に喋れるようになった、って演出したのですにゃ」
「なんだ……」
「やっぱり、こうやって喋れるのは嬉しいですにゃ。それに、コミュニケーションが楽ですにゃ」
たしかに、と思わず私も笑う。
「うん、私も嬉しい。こうやって今日も話せるの。ありがとね、気遣ってくれて。今日までずっと喋れないフリさせて」
「別にいいのですにゃ。猫の生活も、案外楽しいですにゃ。じゃあ、早くご飯食べるですにゃ」
また、新しい日常が始まった。
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