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「おはようですにゃ。起きるですにゃ」
寝ぼけていたため、今何が起こったのかを理解できなかった。
「起きるですにゃ!」
もう一度その言葉を言われ、猫パンチを喰らった。一瞬で目が覚める。
「え、今喋った?」
「喋れるようになったのですにゃ」
今まで「ニャー」としか鳴かなかった猫が、喋っている。
「え、なんで喋ってるの……」
「それはあとで話すですにゃ。まずはボクと遊ぶですにゃ」
「準備が出来たらね」
そう言って布団から出てテレビをつけ、朝ごはんを作り始めた。「四月一日、朝のニュースです」とテレビが喋り始める。
うちの猫は私の世話をしてくれる。なぜか私よりしっかりしていて、朝は起こしてもらえるし、夜は寝落ちしたらそっと毛布をかけてくれる。それに、私が仕事で疲れて帰ってきたときにはそっと私に寄り添ってくれて、その可愛さに癒されている。そんな日常が始まったきっかけは、半年前に彼氏が亡くなったことだった。悲しみに暮れていた日々を、この猫は幸せな日々に変えてくれた。
「ボクのご飯も忘れずにしてくださいにゃ」
「わかってるよ」
「一昨日はボクがアピールするまで忘れていたことを覚えてないのですにゃ?今日は特に腹ペコだから忘れちゃダメですにゃ」
「はいはい」
微笑しながらご飯を作る。未だにこの状況が信じられないまま、朝ごはんを作り終え、猫のご飯も忘れずにダイニングルームへ持ってきた。
「いただきます」
「いただきますですにゃ」
いつもの鳴き声が言葉に変わっているのが新鮮だった。今までの日常が、変化している感覚。
「ご飯食べ終わったら遊ぶですにゃ。絶対ですにゃ」
「そうね、片づけ終わったらね」
「なんで後回しにするですにゃ」
「やらなければいけないことだからだよ」
やらなければならないこと、なんて他にもたくさんあるけれど、今日は食器を片したらすぐに遊ぶことを決めた。
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