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不思議と、晴親の夢を見るのはこれで最後だとわかった。
「あいかわらず健気な男だな。いくら回復が早かろうと骨が折れれば鬼だって泣くほど痛い。恰好をつけたかったんだな」
自分と同じ顔の男が楽しそうにノートを捲っている。
「この続きは? まだ書くのか?」
「ああ、もう習慣だからな」
そう答えると、「そうか」と嬉しそうな笑顔が返ってくる。
「鬼である以上、半妖とて不老不死に変わりはない。鬼の体液には人を老いさせない効果がある。定期的に摂取すれば老いも死にもしない。お前は自分の日記が歴史書になっている未来を生きるかもしれないな。そうなったら、人々の鬼への心象も変わりそうだ」
ノートを渡され、その手で肩を叩かれる。
「そうだ。鬼に食われたいと言っていたな。最後にとっておきを教えてやろう」
蓮介が首を傾げると、晴親は笑顔で耳打ちをした。
「試してみろ」
共有されたとっておきは予想の斜め上で、たいした別れも言えないまま最後の夢が終わった。
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