ユリエ郊外

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「父も内心わかっているのですよ。『ユリエの涙に触れずに黄昏を迎えた者は生涯ユリエの涙の恩寵には預かれない』という言葉が皇家にはありまして。黄昏を何とするかには意見は分かれるところではありますが、今までの皇帝達が皆若いうちに最初の即位をしているところから、人生の黄昏、身体的な衰えではと言われています。少なくとも47歳は若くはないですよね。あ、『ユリエの涙に触れる』というのは、即位するのと同義だと思ってください」 ミメッカ9世はつけつけと続けた 「姉は従兄弟と結婚して、今、30歳。私が26で、妹のイヴェリンヌが18。誰が即位してもおかしくない。父以外ならね」 「これは別に、お二方に我々兄妹を選んで欲しいという取引ではありません。…勿論運命が私たちを結びつけるならそれ以上の栄誉はありませんが…ただこれ以上、父にみっともない姿を晒して欲しくないのです。本来であれば即日ユリエに入っていただき、もう皇帝への謁見も済ませてもてなされているべき賓客を、父の横車でこうして郊外の宿屋に留め置いている、という事が」 「同じミメッカ、を名乗る者として、とてもとても恥ずかしいのです」
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