ユリエの春

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「あれがユリエの都…!」 クバルツァロンの首都クバルを出発して約半年、ここ数日はよく耕された耕作地の間を通る街道をひたすら北に向かって来ていた。街道は広く交通量も多い。ユリエまであと少しの宿(しゅく)で、一旦留まり、最後の先触れを出す。明日明後日にはユリエ入りが許されるだろう 埃っぽくなった馬車を磨き、馬にブラシをかける 荷運びの奴隷も身体を清める。この時の為に用意されていた荷車の荷を解き、新しい服やサンダルを皆に配る ユリエ手前最後の宿だけの事はあり、安宿から貴族向けの高級な宿までふんだんにあるし、旅団が荷を下ろせる広場や馬を繋ぐ場所などもきちんと整備されている 滞在はせいぜい2〜3日だろうが、中でも最も格の高い宿を召し上げてクバルツァロンの旗をかけた 宿に泊まるのは王の名代であるカーバイン王子とジーリョ姫、その侍従や侍女達と警護の騎士団員数名だけだ 残りは貴族であっても今まで通り野営である。野営といっても長旅に備えて準備は怠らなかった為、天幕をいくつも張っていたし、その天幕の上にひらめく吹き流しの色と揃いの意匠から、クバルツァロンの使者、それも王族がやってきているのだと誰にでもわかるようになっている
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