ユリエの春

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時はユリエ歴1198年春。ユリエ歴においては春の訪れが一年の始まりなので、今は年始の喧騒が落ち着き、芋の作付けが始まったばかりの時期だ。もう少ししたら、小麦の収穫と夏野菜の栽培も始まる クバルツァロンの使者達がユリエにやってきたのはそんな季節だった。きびしい冬を越え、春の花開き、綻ぶ美しい頃 一般的に冬の旅は過酷ではあるが、クバルツァロンは帝国内でも暖地で冬は乾燥しあまり雪が降らない地域が多い為、単に寒いだけでそれほど厳しい季節ではない。それよりも農繁期を避ける事を優先した旅だった ユリエ歴1200年には、サジラウ帝国の100年に一度の例大祭がある。カーバイン王子とジーリョ姫はその例大祭に向けてのクバルツァロンからの使者だ 例大祭の使者として、王家の者を送るのは大袈裟ではない。だが2年前からとなると流石に早すぎるきらいはある。あからさまに早すぎる訪問は、サジラウ皇家との縁組を狙ったものなのは明白だった カーバイン王子は25歳、ジーリョ姫は22歳。どちらも独身だし、クバルツァロン王家は代々サジラウ皇家と縁組してきた王家の為家格も釣り合う あえていうなら、男女とも結婚適齢期は十代から二十代前半なので二人とも年嵩ではあるが、歴史を見るとサジラウ皇家はクバルツァロン王家ほど年齢に拘らない傾向が強い為さほどハンデにはならないだろう
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