白百合を添えて

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 は? 社長? 桜は混乱した。 「社長呼びはやめてください。あと私はただのプロジェクトリーダーにすぎません」  女子高生が呉野に向かって言う。 「申し遅れました。私はここのリーダーです。伊駒(いこま) (のぞみ)、花由綺高校2年生です」  伊駒がお辞儀する。桜は状況がよくわからないながらも、お辞儀を返した。 「新卒採用で面接をするというので、ご挨拶に参りました。実は、うちの会社に応募してくれる方、なかなかいなくて」  それで「社長」がお出ましになるのもたいしたものだが。初手でいきなり社長面接をする会社は今までなかった。風変わりというか、就活生に対して顧客同然の手厚いもてなし様である。所属社員は伊駒を中心としたプロジェクトメンバーに、伊駒の知り合いづてでスカウトした者なのだそう。 「寺川さんは、どうして蒼月に応募しようと思われたのですか? あまりない職種で、それも人の死に関わる仕事なのに」  伊駒が尋ねる。伊駒が話すと、どうしても「面接質問」というより「純粋な疑問」に聞こえてしまう。いや、伊駒は純粋な疑問として問いかけているのかもしれない。 「人に寄り添う働き方をしたい、と思ったからです。正直なところ、私は今まで死について深く考えることなく生きてきました。同時に、取り柄のない私は社会に何か貢献できるのだろうかという不安を抱えていました。けれど、御社の求人を見て、ライフプランニングに関わる仕事であれば誰かのために働くことができると、そう思いました。それに、最期の在り方を見つめ直すことでよりよく今を生きる、という考え方は私にはなかったので、強く興味を惹かれました」  桜は本心からそう口にした。初めは内定を得ることだけを考えていたが、面接対策で会社について調べていくうちに考えが変わった。ここでなら、自分だって誰かをサポートできるかもしれないと思った。
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