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エンタイトルツーベース
「普通になるのは嫌だ」
思えば、若かりし自分は大概、皮相浅薄な人間であったと感じる。いや、寧ろそれは今も変わらない。
野田剛、44歳。一個下の家内とは今も働いている都内のメーカーで出会い、十数年前に結婚した。子供は一人。マイホームは子供が生まれて数年後、家内たっての希望で郊外の一軒家を購入した。4LDKの二階建て。子供一人の家庭には少々手広く感じる。因みに、まだまだローンは残っている。これのどこが「普通」では無いのだろうか。
相対的貧困が顕在化しつつある日本でその環境は十分すぎるほど恵まれているだろう!と批判されそうな独白でも、実際、私の心は満たされていない。年々愚痴マシーンと化す家内に、年功序列よろしく、そこそこのポストに就こうがやりがいを感じられない仕事。そして息子は今日も学校に行っていない。二階の角部屋という彼の「聖域」に今日も巣ごもりしているのだろう。最後、まともに会話したのはいつだっただろうか。
因みに、度々出ているこの「家内」という表現は「あんたの給料じゃ賄えない部分をパートに出て貢献してやっているのに、お前は何様だ!」と妻に怒鳴られてから我が家では禁句となっている。禁句と言っても、妻の夫は私しか居ない以上それは私に対してのみ効力を発揮する恐怖政治だ。
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