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伊織にとって神威との出逢いこそが僥倖だと信じて疑わなかった、あの頃も。 「欲しい物をくれてやる。何が望みだ?」 文字通り、天から降って湧いたかの様な提案に否やはなく応えたあの日も。 神威を抱けるのならば何を代償にしても後悔はない、そう決意したあの頃も。 身体を重ねる度、神威の脳裏では別の誰かに抱かれていると知っていても。 神威を抱ける喜びに変わりはない。 このひと時だけは、神威(貴方)伊織()のモノだ⋯⋯! 緩急を付けた抽挿に神威が喘ぐ。その痴態に煽られた伊織は乳首を抓り更に声を上げさせる。 「ぃぉ⋯⋯」 掠れた声、跳ねる腰、震える脚。神威の全てが求めているモノ。神威が望んでいる行為(この先)をいやと云う程熟知している自負がある。 縛めからの解放。 より深い結合を望んでいるのは伊織も同様だった。 器用に手足の縛めを解くと、上半身を起こして神威を見下ろす。自分を見返す瞳の中に、挑発の色を確認すると、思わず舌なめずりをした。 自らの欲望の為に身体を差し出した者同士。互いに得る快楽だけでは物足りなくなってきている。 だが今は⋯⋯ 自由になった手足を伊織の体に巻き付かせ、より深い結合を望む神威に、伊織の脳が痺れる。 伊織の限界も近いと云うのに、らしからぬ仕草は余計に劣情を煽った。 伊織は喉奥で唸り声を上げ、そして果てた。
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