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「鷹司さん、これなぁに?」
伊織にとって表と裏、どちらの部下よりも年若の生徒がテーブルに並べたカードを不思議そうに眺めている。
「これですか?タロットカードと云うんですよ」
「タロット⋯⋯?」
「トランプは知ってますね?トランプの⋯⋯お母さんみたいなものです」
「トランプ分かる!ババ抜き、神威さん強すぎて勝った事ないけど」
伊織は苦笑した。神威は雅相手でも手を抜かないのだ。
「これもババ抜き出来るの?」
「いえいえ、占いに使うんです」
「占い?」
「そうですよ。誕生日とか血液型とか占いは様々ありますが。未来や人の心の内をカードが教えてくれるんです」
「それって誰かの為になる?」
「⋯⋯そうですね、なる場合もありますね」
伊織はテーブルに出ているカードを持ち上げた。
「カードには色々意味があって、奥深いんですよ」
「鷹司さんは占いも先生なんだね」
雅が嬉しそうな声を上げ、頭を下げた。
「今度教えて下さい」
「犬神さんが良いと仰ったら、良いですよ」
「鷹司さんは、ホントすごいデス」
家事も万能。仕事も出来る。それに占いまで。
雅は伊織に近付ける日が本当に来るのか、些か不安になった。少しネガティブになった思考を払拭しようと、伊織が手にしたカードを視線を向ける。視線に気付いた伊織が口角を上げた。
「これですか?吊るされた男のカードです。私に似ているので、好きなカードです」
「え?吊るされてるのが似てるの?」
「⋯⋯そうですね。いつかカードの勉強をする日が来たら、教えますね」
「わぁーい!あ!よろしくお願いします、先生」
伊織は感慨深い面持ちで雅を見、そしてカードを見た。
その瞳には神威への想いを湛えていたが、雅が気付く事はなかった。
The hanged man END
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