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知らない住宅街は要塞のようだ。 薄く積もった雪の絨毯の上、僕と、これまた知らない少女は連れ立って歩いていた。 スニーカーを動かしながら、名前も知らない彼女の背中との微妙な空白を眺める。その揺れる髪先にどきりとして、俯いた。 ──この子は佐伯瑠璃かも知れない。 先程の初対面の時に生まれた疑念がぶり返して、また暗雲のように僕の頭全体に影を落とした。 仕草。 明るい声。 笑い方。 彼女の雰囲気を構成する一つ一つが、僕が思い描く「15歳になった佐伯瑠璃」そのもので。 さっき出会ったばかりの人物なのに、「いやいや考え過ぎかも」なんて冷静な頭も無視で、僕の目は瑠璃本人だと言っている。 おかげでこうして一言も話さず歩いている間も、普通の初対面の人と一緒にいる時を遥かに超えて気が休まらない。 ひょっとしてあちらも僕を僕だと認識した上で接しているのでは……なんて仮定に仮定を重ねた可能性すら疑い始めては、また前方の彼女を見やる。 さっきから、胃がきりきりすぼまったままだ。 そんな僕の思案など気にも留めていないだろう様子で、瑠璃(仮)は足を止める。 「着きましたよ」 前方には、そびえるような大きな家の裏門があった。
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