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次の夜
窓の外が暮れて行き、教室の中はそれに従い薄暗くなって行く。
図書委員会で少し遅くなった私は、カバンを取りに急いで教室に向かう。遅いとは言っても、先週の図書室当番の時程ではない。バスケット部もまだ練習中のはずだから、今日は玄関でアイツに捕まることはないはずである。
不覚にも教室の机の上に置きっ放しにしてしまったことを後悔しながら、私は教室に戻りカバンを手に取ると、小走りで教室を出ようとした。
その時である、後ろから両肩を掴み、行く手を邪魔するものが現れたのだ。
「きゃぁっ!」
驚いてその手を振り解き振り向く私。しかし、再びそいつは私の両肩を掴み直し、そのまま壁へと押し付けて行く。
「痛っつ!」
私のその声も無視して、そいつは私を壁に押し付ける。
至近距離で向かい合う顔と顔。予想通りその犯人は央仁である。
壁際で逃げ場を失う私に向かい嘘っぽく心配そうに見つめる長身のアイツ。その表情にゾクゾクしている私がいる。
もちろん、それは不気味だからで変な期待からではない…はず。
カバンを取るだけなので、照明も付けなかったせいもあるけど、教室の中の人陰に気付かなかったのは不覚であった。
「ごめん、痛かった?」
「な、なによ。痛いに決まってるでしょ」
「ごめん、逃げようとするから」
「急いでただけでしょ」
「何で急ぐの?優しくするからゆっくり話しをしようよ」
「しないわよ」
「目を閉じてみて、落ち着くから」
「なに言ってんのよ、閉じないわよ」
そう言うのに、私の眼は自然と閉じて行く。
その私に彼の吐息が近づいて来るのが分かる。
(ダメ、ダメだって、玲奈はどうすんのよ)
そう言おうとしたが言葉にならない。
いや、その前に玲奈がどうこう言ってる場合じゃない。
(どうしたの?どうしたいのよ私?
意思に反して体が受け付けているってことなの?
まさか、そんなはずは…ないはず)
そこで…
「カンカンカン…朝ですよ~!おっはようございま~す、おっはようございま~す…」
ゴングに救われる。今日もこのちょっと変わった目覚まし時計は私の為に活躍してくれている。これで6日連続同じ夢である。
外は今日も天気良好。でも、それとは裏腹に私の気分は最悪だ。肩も痛いし…痛い?
痛いって??
パジャマを捲って見てみると、肩が赤くなっている。それも両肩。丁度、夢で央仁に押さえ付けられた部分である。
昨夜、お風呂に入った時にはなかったはずだ。その後に両肩が赤くなる事は無かったはずである。
これって夢が原因ってことだろうか?いや、まさか…
このままだと今夜、夢の中で私はどうなっちゃうのだろうか?
不安になってしまう…
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