転入生

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転入生

 数日後、高校での朝礼時、担任の先生の後ろに一人の長身の男の子が立っている。何処かで見たような、そんな感じのする子だが、定かな記憶ではない。 「今日からこのクラスに転入生が仲間入りする。自己紹介して」 「ウテンシュンです。今日から宜しくお願いします」  黒板に書いた文字は、雨天春(うてんしゅん)。  ”宇添俊”と”雨天春”字は違うけど同じ名前である。  名前を聞いた瞬間から私の体の震えが止まらなくなっている  (噓でしょ…)  偶然なのだろうか?それとも現実の世界にまで何か起ころうとしているのだろうか?  こんな珍しい名前で偶然が起こるとは考えにくい。    (なぜ?なぜ??どう言う事なの…)  でも、心を落ち着かせ考えてみると、これまでの夢と関係があるとしても、変えた方の名前あって、悪夢の元凶のアイツの名前ではない。だから問題は無いはずである。私はそう自分に言い聞かせ、心を落ち着かせようとする。 「じゃあ、取り敢えず、この列の一番後ろに座ってくれるかな」  そう言う先生に、 「はい、わかりました」  彼はそう応え、一番後ろの席に向かい歩き出す。  落ち着きを心掛けて、そんな彼を見てみると、真面目で気弱そうにも見えて来る。 「気にし過ぎかな?」  私は少し安心して自分の横を通り過ぎる彼を見ている。すると、その彼がすれ違う瞬間にチラっと私の方を見て笑顔を浮かべた気がしたのだ。  その浮かべた笑顔に私は若干寒気を覚えてしまう。それはあまり見たくない笑顔似ていたからである。  私はそれを気のせいだと言い聞かせて、視線を自分の机の上に戻どすと、四つ折りにした小さな紙きれが置いてあるのに気付いた。 (なに、これ?)  私はそう思いながら、周りから見えない様にそれを掌の中に隠して、そっと見てみる。  するとそこには、  ”危なかったね。助けられて良かったよ。  良かったら付き合って欲しいんだけど、いいかなぁ?”  そう書いてある。  これは、どう考えても最近まで見ていた私の夢の事としか思えない。 (うそっ!何で彼が私の夢のことを知ってるの?  「助けられて」ッて、枕もとの目覚まし時計と何か関係でもあると言うの?  ウソでしょ…)  再び寒気と震えが襲って来る。  しかし、それとは裏腹にこれまでも不思議なことが現実となっているのだから、もう一つくらい不思議なことがあっても可笑しくはないと思おうとしている私もいる。  (私、変な耐性が付いてしまったのだろうか?)  震えながらもそう思ってしまう。  もちろん、この変な耐性の尽いた私は、悪夢から救われたのは目覚まし時計のお陰だとも思ってる。だから、怖さを感じながらも少しくらい付き合うのもしょうがない。義理堅い私はそう思ってしまう。 (付き合うと言っても、そんな無茶なことは言わないだろうし…)
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