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 ――バンッ!と扉の閉まる音がして事務所にいた人間はそれで察知する。 (あぁ、今日はGMの機嫌が悪い)  GMは、グループマネージャーのことで、うちの部署をまとめる人。何チームかに分かれている直属の上司はチームマメージャー(TM)が対応してくれるもののGMが結局は部署を統括しているので顔色を伺うのは日常だ。  そしてそのGMこと大八木(おおやぎ)さんはとても感情の起伏が激しい。社会人として上に立つ者としてどうなの?と思うくらい日によって態度が変わる。基本は自分の機嫌と都合なんだろうけど。それでも仕事が出来る人らしく業績重視のブラックな会社は都合よく目を瞑っている。部署の人間が耐えればいい、そんな感じだ。 「望月(もちづき)さん」  TMの澤田(さわだ)さんに呼ばれて顔を上げた。 「はい」 「僕これからA社と打合せになるからそのまま直帰になるし、何かあったらメールか……緊急なら個人携帯でもいいしかけてね」 「わかりました」 「来週会議で使う資料の準備進めておいて。よろしく」 「はい」  澤田さんは落ち着いた優しい人で仕事するうえではとてもありがたい。いつだってGMとの間には澤田さんが入ってくれるからとても頼りになるのだが――。 「これどうなってるんだ」  その間に入ってくれる澤田さんがいない午後、GMに呼び出されて結構派手に怒られた。しかもとても理不尽な理由で。 「この進捗状況が全く変わらないのはどうしてだ。ここの製品を作ることができるよう準備を進めていかないと話にならないのはわかるよな?加工業者と組立作業者の意見もどれだけ取り入れた?納期がまだあると思って舐めてんのか」 「そんなことはありません!今回は1ユニットで少なくても数十点……多いと百点近い部品を設計するので、外注設計業者に振っている分も多くてそれが……」 「言い訳なんか聞いてないんだよ!」  バンッと書類でデスクを叩かれて肩が震えた。 「とにかく進捗状況をもっと事細かく記載して第三者が状況を把握しやすいようにスケジュールを書き直せ!」  そう言われても外注に頼んでる分の事細かな詳細スケジュールなんかわかるわけない。とりあえず先方に電話して状況を聞いてみるしかないかな。あとは他部署に相談して進捗状況を確認して……頭の中でいろいろ算段しつつ今日の業務を後回しにしてGMに言われた仕事に手を付けた。
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