第5話 新しい墓所

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第5話 新しい墓所

 一方のネフェルカプタハは、まだ、貴族たちの訴訟の件から抜け出せずに居た。  翌日、朝のお勤めが終わったあとで、ネフェルカプタハは大神官である父に呼び止められた。  「カプタハ、すまんが、これからひとっ走り、ソベクイブラー殿のところへ行って貰えんか」  「あん? 昨日の訴訟の貴族の片割れか。何でまた」  「わしがレフェルジェフレン殿のほうへ行くからだ」 プタハヘテプは、簡潔な言葉でそう言った。  「訴訟が結審して、双方の合意した内容をジェフィティが纏めてくれただろう。その写しを、二人それぞれ届けねばならんのだ」  「ああ…。そういうやつか」 確かに昨日、法廷を退出したあとすぐにジェフティが書類を纏めて、署名を貰いに行くよう他の書記に指示を出していた。大神官と当事者二名の署名は、昨日のうちに集め終わっていたのだろう。  だとすれば、写しをそれぞれに渡しに行くのは早いほうがいい。それでケリがつくのだから。  「それと、お前、ソベクイブラー殿を新しく割り当てた墓地まで案内してきてくれ」  「えぇー、何で俺が? めんどくせ…」  「まぁそう言うな、相手は貴族様だ。それなりに立場のある神官を付けないとナメられる」  「ちぇ…まあ、良いけどさぁ。」 文句を言いながらも、ネフェルカプタハは、大神殿から出られること自体は嬉しかった。それに、貴族に付き合えば、普段は滅多に口にできないような高級な料理を、持て成しに振る舞ってくれることもある。  「では、何人か連れて行くといい。できるだけ『仰々しく』やるんだぞ。いいな」  「おうよ。任せとけ」 親子は、お互い分かっているといわんばかり、にやりと笑みを交わした。  貴族というものは、立場や肩書、人からどう見られているかをやたらと気にするものなのだ。  何をすれば喜ぶかくらい、よく分かっている。――たとえ墓地の案内だけだったとしても、こちらも相応に着飾って、神官の行列くらい作ってやろうではないか。  というわけで、ネフェルカプタハは高位神官の衣を身にまとい、何人かの下級神官を引き連れて、ソベクイブラーの屋敷を訪問した。  敷地を取り囲む高い白い壁、その中に作られた小さな庭園と、色とりどりの壁や床で飾られた二階建て。貴族の屋敷は、どれも構造がほとんど変わらない。違うのは、庭に植えられる植物や、家主の好みによって選ばれる装飾くらいか。  屋敷と言っても、本邸は郊外にあるのだから、ここは別邸の一つのはずなのに、この力の入れようだ。それも立地にこだわっている。  大神殿がすぐそこに見える街の中心部、大通りに近い場所にある。貴族の館が集まる高級住宅街なのだ。  古都メンフィスの高級住宅街に屋敷を構えることは貴族たちの憧れのようなもので、自分の家が由緒正しい名家だと示すことにもなる。それで、誰もがこの辺りに屋敷を構えたがる。  北に拡張された北市街のほうにも高級住宅街はあるが、わざわざそちらに住みたがるような物好きは、大神官と仲の悪い州知事や、同じく大神殿の権威をよく思っていない執政官くらいのものだろう。  その、庶民の家の何のも大きく、比べ物にならないくらい立派に作られた見栄の塊のような別邸を訪れたネフェルカプタハは、書類を手渡したあと、ネフェルカプタハは澄まし顔で口上を述べた。  「大神官の名代として参りました。これより、ソベクイブラー殿を、主神プタハ様に祝福された、新たな墓所へとご案内致します」  「うむ。では、参ろう」 そう言って、ソベクイブラーは、輿を用意させた。自分では歩かないのだ。  (どおりで、小太りなわけだよな。まぁ、歩くの遅いよりは全然いいんだけどさ) 心の中でそんなことを思いながら、ネフェルカプタハは澄まし顔のまま、使用人たちの担いだ輿の先頭に立った。  神官が先導する輿の行列が大通りに出ていけば、当然、人目を引くことになる。  もちろん、ソベクイブラーはそのつもりで輿に乗っているのだ。使用人に扇を仰がせ、まるで王その人のように椅子にどっしりとふんぞり返っている。腰の上にいる男としては、出来れば、この堂々たる姿を敵であるレフェルジェフレンにも見せつけたいと思っているに違いない。  ネフェルカプタハのほうとしては、面倒くさい相手が気分良く出かけてくれれば、何でもいい。  行列は、街の北門を出て、運河を通り抜けて北部の墓所を目指して進んでいく。  割り当てられた新たな墓地は、それまでの墓地から北西の方向で、大昔の王たちの築いた石造りの巨大な丘が並ぶあたりだ。  墓所が近づいてくるにつれて、輿の上のソベクイブラーは、妙に興奮した様子を見せ始めた。  「あれは、…おお。いにしえの神王の”天への(きざはし)”ではないか。こんなに近くに墓を作ってもよいのか?」  「もっと近くまで行けますぞ。古い時代の墓はそれほど密度が高くないですからな。」 ネフェルカプタハは、もったいぶった口調で言う。  「どうです、神王たちの威光に触れて、そのお膝元に墓地を持てるというのは」  「うむ、うむ。実に素晴らしい。いや、確かにここならば、我が祖先たちも満足して眠っていただけるであろう」  (チョロイもんだな…) 昨日は法廷であんなに声を荒らげていたくせに、今日はずいぶんと満足そうな顔だ。  もちろん、貴族や高官たちが墓の位置取りや見てくれや規模に非常にこだわることは、良く分かっている。  古来より使われている歴史の長い墓地に埋葬されるほど格が高い墓と見なされ、格の高い墓を持つ家系ほど格式が高いと認識される。  貴族社会というのは、そういうものだ。だからこそ、先にレフェルジェフレンのほうに墓の移転を提案したのだが――。  (ま、断ったあっちの貴族は没落貴族っぽいし、こっちのオッサンに良い墓地を割り当てたほうがウチとしても得だな。これなら、次もたっぷり寄進を出すだろ) 輿の上の肉付きの良い男をちらちらと見上げながら、ネフェルカプタハは、そんなことを思っていた。  「さて、この辺りです。あそこに見える古い石碑と、そちらの石積みの間。この範囲ならば、過去に墓所が築かれた記録はございません。使っていただいて問題ないかと」  「ふむ。――」 輿が降ろされ、ソベクイブラーは、のそりとした足取りで砂地に歩み出した。  すぐ目の前の丘に築かれたいにしえの岩山を見上げたあと、足元の地面を確かめる。  「岩盤はしっかりしていそうだ。地下水が湧き出すようなことは、ないのだろうな」  「側に古い時代の墓があるのですから、可能性は低いでしょう。ですが、落盤はどこであれ、ありえます。万が一、墓を作れないような事態が発生しましたら、近くに別の場所を割り当てさせていただきますよ。それと…」 彼は、真面目な顔になって貴族の男を見やった。  「記録されていない墓や遺体、副葬品が発見された場合には、必ず大神殿までお報せを。」  「遺体? そんなことがあるのか?」  「正規に作られていない墓もあるのです。近隣住民が、行き倒れを適当に墓地に埋めて処分した、などということも過去にはありましたので。とにかく、そうした問題が発生した場合には、勝手に処理されずご連絡いただきたいのです。よろしいですかな」  「分かった、覚えておこう」 ソベクイブラーは、割り当てられた土地を眺め回し、だらしない笑みを浮かべた。  「すぐにも人足を寄越して掘らせよう。前の墓は少々、狭すぎたのだ。ここならば、立派な礼拝堂も作れるだろうからな」  「……。」 墓が立派になればなるほど、メンフィスの街の職人たちの懐は潤うのだ。墓所は冥界神の領域。神々の加護を受けた土地を信徒に下げ渡して、それが神殿の利益として還元されるなら、正当な利益の循環とも言える。  ソベクイブラーは、浮き浮きした様子で墓地を歩き回ってどんなふうに墓を作るか計画を練っている。そちらは、気が済むまで歩き回らせておけばよい。  ネフェルカプタハのほうは、近くの古い記念碑の影に休みながら、墓所を見渡した。  (はあ…。これで用事は終わりか?) と、彼はふと、視界の端をうろうろしている兵士の一団に気がついた。  墓所は、川が増水しても水に浸かることが無いように、少し高くなった丘陵のほうに作られている。そこからは、川べりの耕作地も、川に沿って広がる上流と下流の風景も、広く見渡せるのだ。  兵士たちが居るのは下流の方で、ちょうど、耕作地がいちど途切れて牧草地に変わる辺りだ。  (何してるんだ。あそこは、元は大神殿の土地――ああ、そうか。”城壁”の件か?) よく見れば、川に近いあたりでは日干しレンガを作っているらしい。泥を固めて一週間も放置しておけば、乾いて固くなる。それを積み上げて、表面に白い石を積み上げれば、立派に「白い城壁」が完成する。  手抜きに見えるかもしれないが、最近では、王墓もそういう作り方をしているのだ。すべてを切り出した石材で作っていたのは、何百年も昔の神王の時代でもなければ、やっていない。安価だし、何より手早く作り上げることもできる。それに、泥から作られるレンガはどこでも手に入るから、近くに石材の産地が無くてもなんとかなる。  兵士たちは、壁を作る予定地の周囲を巡回しているようだった。  ジェフティの立てた計画では、最短半年で城壁があらかた完成することになっている。かなりの突貫工事だが、下流から攻め上ってくるかもしれない敵に対して防衛態勢を示すなら、ぐずぐずしてはいられないのだ。  そうして、しばらく遠くを眺めていた時だった。  「ネフェルカプタハ様、ちょっと来ていただけませんか」 一緒に連れてきた神官の一人が、呼びにやって来た。  「ん、もう帰るのか?」   「いえ。ソベクイブラー殿の使用人が、何か見つけたそうです」 行ってみると、貴族の男は手のひらに何かを載せて光にかざして眺めていた。  「どうかしましたかな」  「おお、神官殿。さっそく妙なものを見つけましてな」 差し出されたものは、紅い石で作られた、糸を結んだような形の護符だ。  「”チェト”だな」  「ふむ?」  「ああ、その――」 小さく咳払いして、ネフェルカプタハはとりつくろった口調に変わった。  「その、護符の名前です。イシスの結び目、とも呼ばれます。女神の守護を得るためのものですが…どこかに落ちておりましたかな?」  「そこの砂の中に埋もれていたそうだ。盗掘人が墓から掘り出して、落としていったのか?」  「かもしれませんが、これはご婦人方が女神イシス(アセト)の加護を願って身につけることもあるもの。墓参りに来た誰かの落とし物やもしれませんな。もしご入用なら、大神殿のほうで清めの祈祷をして、お返しいたしますが」  「まさか、拾ったものを使うほど、当家は卑しくはない。そちらに寄付ということでお渡ししておこう」 と、ソベクイブラーは護符を使用人に手渡し、使用人は、うやうやしくそれをネフェルカプタハのほうに向かって差し出した。  ネフェルカプタハはというと、傍らの下級神官に、受け取るよう目で合図した。  ただ物の受け渡しをするだけだというのに、色々と面倒くさいのだ。  「お心遣いに感謝いたします。では、こちらは当神殿で、適切に取り扱わせていただきましょう」 勿体ぶった口上を述べながら、心の中では別のことを考えている。  (このオッサンのほうは、あんまり細かいことに頓着しねぇんだなあ…) 争いごとに関わったもう一人の方の貴族、レフェルジェフレンは、装身具を山程身につけて、まだもっと欲しそうにさえ見えた。  まるで、動く財産一式のようだった。目の前に護符が落ちていたら、それが落とし物だろうと構わずに、その場で身につけていたかもしれない。  ともあれ、この様子ならソベクイブラーは、墓を掘っている時に何か見つけても、秘匿せずに正直に申告してきそうだった。  (まあ、無いとは思うが、墓掘ってる時に、ついでに隣の墓も開けてみる奴が、過去にいなかったわけじゃねぇからな。…あとで、大神殿の衛兵にも、新しい墓を掘ってる話は伝えておかないと)  「よし、よし。だいたいのところは分かったぞ。手配した人足は明日から寄越すとしよう。では、戻るぞ。お前たち」 満足した様子のソベクイブラーは、ここまで乗って来た輿に腰を下ろし、使用人たちがそれを担ぎ上げた。  「では、街までお供いたしましょう」 ネフェルカプタハたち神官も、来た時と同じように輿に付き従う。  ちょうど、いい時間帯だ。  上手くすれば、このあと街に戻った時に屋敷で少し休んでいかないかと申し出があり、遅い昼食のお相伴に預かれるはずだった。下級神官たちも、それを期待して着いてきているのだ。中には、はや、高級なビールや肉のことを思い浮かべて口元を拭っている者までいる。  気位の高くて扱いにくい貴族だが、気前がよければ、些事に煩わされるだけの釣り合いは取れる。  そうでなければ、誰も、輿の上にふんぞり返っている偉そうな連中に媚びへつらい、頭を下げたりするわけがないのだ。  夕方、満足げな顔をして大神殿に戻ってきたネフェルカプタハを見て、プタハヘテプは苦笑した。  「口元に脂が残っているぞ。まったく…、持て成し料理は美味かったか」  「ああ、半日へこへこ付き合っただけの甲斐はあったな。んで、親父のほうは?」  「まあ、神殿敷地内の宿舎にお泊りの方だ。お察しだよ」  「なんだよ。逆のほうが良かったか?」  「いいや。街から離れて出歩くのはお前に任せたほうがいい。わしも、もう年だからな」  「またまた。――つうか、親父が相手してた貴族のほうが偉そうだったし、俺が粗相すんのが怖かったんだろ」  「まぁ、それもある。」 あっさり認めて、プタハヘテプは夕方のお勤めに使う予定の祭具を見下ろした。  夏の盛りを過ぎ、日暮れの時刻は日毎に早くなっている。つまり、冥界神の目覚める時刻も、少しずつ早くなっているということだ。  「レフェルジェフレン殿は、自分の家のほうが歴史が長く、格が高いと思っているからな。この大神殿の長たるわしが、直々に持て成すのが筋というものだろうよ。もっとも、あの方の家は少々問題を抱えておって、この先どうなるかは分からんのだがな」  「問題?」  「例の、下流の州が独立した件だ。――レフェルジェフン殿の弟ぎみが州知事をやっている州というのが、ちょうど、王を僭称した州知事の治める州の隣なのだよ。で、敵対しても勝ち目がないと見たらしく、どうやら、そっち側の勢力に(なび)いたようでな。」  「へえ。てことは、中央政府からすれば裏切り者側なのか」  「悪くすれば、土地や財は没収される。少なくとも、あの家が下流の州に持っていた屋敷や土地は、自由に使えなくなった。もっとも、今の代の当主の手腕も今ひとつで、財産は目減りし続けていたはずだ。寄進も、年々減っていたところだしな」 大神官は、小さくため息をついて視線を上げた。  「王や大貴族の寄進と墓所の管理は、このメンフィス大神殿の主要な財源の一つだが…、この先の政治状況いかんによっては、少々、財政が厳しくなるかもなぁ」  「まぁ別に、そんな無駄遣いしてるわけでもないし、大丈夫じゃねーか? ジェフティさんのお陰で、昔に比べて黒字が増えてるだし。神殿所領から上がってくる収入だけでもそこそこいけんじゃん今は」  「なんだお前、神殿の帳簿なんて見ていたのか」  「意外かぁ? へっへ、見てるとこは見てるんだぜ。」  「ふむ…。」 息子の意外な成長に驚きつつも、プタハヘテプは、どこか浮かない表情のままだった。  「そう、気楽に構えてもいられんのだ。今後はおそらく、出費がかさむ」  「ん? 何でだ?」  「警備費だ。墓所の巡回兵を増やす必要があるだろうと、ジェフティが言っている。世の中が不安定になってくると、墓荒らしや不届き者が増えるものだ。おまけに今は、移民や異国人まで入り込んで来とるだろう。勝手に墓穴に住み着くような輩が、今後も出てこないとは限らん」  「あー…それは、確かにそうだな」 少し前に、下流の州から来た移民が、ずっと昔に放棄された岩窟墓に住み着いて集落を作っていたことがあったのだ。しかも、そのうちの一つに、仕方なかったとはいえ勝手に遺体を埋葬されてしまった。今後も、同じようなことが起きないとは限らない。  それに、異国人のこともある。  ネフェルテム神の小神殿から神像を盗み出した不届き者の記憶は新しい。  そもそも、この国育ちの人間と異国人とでは、信仰のあり方が違うのだ。  この国の神々に敬意を持たない連中からすれば、神殿同様、墓のほうも、ただの”掘れば儲かる穴”くらいにしか、思われないに違いない。  「けど、問題は金より、兵士やりたい奴がいるかどうか、じゃねぇのか?」 ネフェルカプタハは、鋭い突っ込みを入れた。  「傭兵雇うわけにもいいかねぇだろ。おまけに、東で遠征隊が大敗して大量に死人出したあとだぞ。この州の中で募集かけて、人なんて集まんのかよ」  「ジェフティも、まさにそこを気にしておったな。州兵ですら人手不足なのだ。墓所の巡回とはいえ、不審者と出くわせば争いごとにもなるだろう。それなりに訓練を積んだ者が必要なのだが、いかんせん、一から育てるのも時間がかかる」  「やれやれ…。農地に人を定着させるっつー話の次は、兵隊育てる話かあ。」  「いずれにしても、人が定着してくれねば始まらん話だ。下流の州のように、治安の悪化で農民に逃げ出されんようにしなければな。それと、布教も大事だぞ。ご加護のある土地のほうが人は安心するものだからな。カプタハ、外出するならついでにしっかり布教してこい」  「えぇ…。何で俺が?」  「お前なぁ。この大神殿でも、独断で説法できるだけの位階の神官はそう何人もおらんのだぞ。食ったメシの分は働け」  「ちぇー、まぁ外出していいんならやるけどさぁ」 ぶつぶつ言いながら、頭の後ろで腕を組んでどこかへ去ってゆく息子を、大神官は、いつもの苦笑とともに眺めていた。  文句は言うが、やる時はやるのだ。何だかんだありつつも信徒からの評判もいい。何より、神官はやりたくないと愚痴りながらも、書記学校を卒業して数年のうちにプタハ神の経典の大半を暗記して、儀礼で朗唱される呪文も習得した。  頭も口も回る。素質もある。  ただ、信仰的な熱意や、真剣さだけが足りない。  (ま、主上様が許しておられるのなら、それはそれで良いのだろう) プタハヘテプは、主神殿の奥の、神像の安置された至聖所のほうに視線をやりつつ、心のなかで呟いた。  神と会話するとか、姿を見るとかいう奇跡は、王でもなければ起こせない。  だが、それでも意志を感じるような気がすることはある。  その意志は、これから来るだろう困難な時代に、型外れでも、現状を変えられる強い心を持つ者たちを求めている。  ――そんな気がしていた。
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