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いざ花見に向かうと、案の定人がゴミのようにわんさか集まっていた。
「どこもシート敷ける場所がないねー」
残念そうにカズハが次女フタバに優しく伝える。
確かにこれだとゆっくりくつろげりゃしないな。
「仕方ないな。
ここは間を取って俺の部屋で宴でもするか」
「しねえよ。
お前の部屋行くくらいなら池の中で花見する方がまだマシだ」
「ははは面白い冗談を言うじゃないかカズハちゃんったら」
しかしまだエイプリルフールでもないんだから程度によっちゃあお兄ちゃんが直々にお仕置きをしちゃうかもしれないぞぉ。
「……あ。
お兄ちゃん、お姉ちゃん」
舌足らずなフタバが俺達の間で前の方に指を差した。
「「あっ」」
俺やカズハは同時に驚いた。
こんな人がたくさんいるというのに、何故か一人も群がっていない一本の大きな桜の樹があったのだ。
ラッキーだと思うところなのに、何故か不思議な光景過ぎて逆に怖い。
絶対何かある気がする……。
「んん⁉︎」
あった。
何かがあった。
木の幹の方に、一つの何かが突き刺さっていたのだ。
よくよく見ると、それは……、
「……剣?」
遠い距離からでもよく分かった。
一本の大きくて丈夫そうな大剣がそこにあったのだ。
「誰かの落とし物か?
全く、花見をするとこでなんちゅーオモチャ持ってきてんだか」
「お前が言える口じゃねえだろ」
おっとこいつぁ一本取られたぜ。
「しかしこれは好都合だな。
皆怖くて近寄れないみたいだしよ」
へっ、全くビビリな奴らだぜ。
たかが一丁の刃物で怖気付くなんて。
こっちは妹達のパンツをこっそり強奪して妹達にバレないかという恐怖心に常に怯えて生きてるんだからな。
それに比べたら屁でもないぜ。
「じゃあどこも空いてないし、そこにしよう、フタバ」
「うん」
疑問を抱きながらもカズハはフタバの手を取って大剣がある桜へと向かった。
俺も妹達の後に続いて前に進──
「ぐふぇっ」
進──めない⁉︎
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