なかまはずれ。

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 ***  レミがどういう人間かというと――正直思い出したくも説明したもないというのが本音。  ブスで、デブで頭も悪くて運動音痴。高校生にもなって、クソダサいツインテールになんかしている。  良いところなんか一つもないような女だった。去年文芸部で部誌を出す時も、みんなで表紙デザインの相談をしている時空気が読めない発言ばかりをして部長を困らせたのをよく覚えている。なんで、風景画の写真素材で表紙を作ろうとなっている時に、自分がイラストを描きたいなんて言い出すのだろうか。  漫画みたいなイラストなんて誰も部誌の表紙に求めちゃいない。しかも、あの女ときたらめちゃくちゃ下手くそなのだ。目がでかくて少女漫画が崩れたような気持ち悪いイラストしか描けない。それなのに、一体どう頭がトチ狂ったら“自分が書かせて貰える”なんて思うのだろう。  案の定、他の部員たちも困っていた。部長が上手い具合に“文芸雑誌だから、風景の方があってるし、いい写真素材サイトを知ってるから”といって丸めこんだからいいけれど。万に一つ、あの女のキモ絵の方が表紙になっていたらと思うとぞっとしてしまう。  しかもあいつときたら、そんなウザい提案してみんなに気持ち悪がられてたのを棚に上げて、あたしに“印刷所の締め切りに間に合わなくなっちゃうから早く原稿上げた方がいい”とかお節介なこと言ってくるのだ。  部長がちょっと早く締め切りを設定していたことくらいみんなどうせ知ってたんだろうし、あたしが締め切り破ったくらいで何の問題もないはずなのに。本当に、自分の悪行そっちのけで人の非ばかり、重箱の隅をつつくように指摘してくる。腹立たしいといったらありゃしない。  そう、あたしが一番あの女を嫌ってるところは、そういう“壊滅的な空気の読めなさ”なのだった。  人が嫌がってることに気付かない、人がやってほしいことをちっともしない。あんな、誰からも嫌われて当然のやつとどうして同じクラスにならないといけないのだろう。もしかして、今まで愛想笑いをしてあの女をあしらってきたせいで、先生達から“仲良し”だと誤解されたのだろうか。  考えただけで、さぶいぼが立つような話である。 『お、同じクラスだね。よろしくね、アヤさん』 『……うん』  あたしは嫌々レミと握手したのだった。もちろん、その手はトイレですぐに石鹸使って洗ったけれど。  いっそ他の奴がこいつを虐めて、学校から追い出してくれないだろうか。それは去年からずっと考えてきたことだった。しかし、残念ながらというべきかあいつは他の人とはそこそこ上手に距離を取っているようで(そしてあいつのクラスにお人よしが多かったようで)、虐められたという話はなく。  イライラしたまま今年になり、同じクラスになってげんなりしたというわけである。しかもあいつときたら、あたし達がどこかに遊びに行こうと計画を立てていると、こそこそ近づいてきて声をかけてくるのだ。 『ねえ、どこに行くの?私も一緒に行っていい?』 『あ、いや、その……ごめんね、今回は身内だけで行くつもりだから……』 『え、そ、そうなの?』 『うん、レストランとか予約しちゃってて、もう人数がいっぱいなのよ。ごめんねレミさん』 『そっかあ……』  ああ、うざったい。まさか本当に、あたしのことを友達だとでも思ってるのか。  一体いつまでこんな風に足らわなければいけないのだろう。新学期早々、心底不快な気持ちにさせられたのだった。  そして我慢しても我慢しても視界に入る顔、声。半月ももたずして、あたしは限界を迎えることになるのである。
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