12.雨上がりのキス

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 まるで声が聞こえたかのように、夕奈がハッとした表情をして三白眼の目をこちらに向けた。 「ゆ、夕奈……?」  面食らって名前を呼んだ瞬間、夕奈がその口元に笑みを浮かべた。  だが、返事をするわけでもなく見上げるようにじっと見つめる瞳の先は、微妙に俺からずれている。  この姿を見ているのではないと気づき、夕奈の視線の先を追うように振り返った。  目に入ったのは、中庭の時計台の上に、黒い白衣をはためかせながら、こちらを見ている死神の姿だった。  何なんだ? と目を凝らして気づいた。
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