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「ずっとここで人を追うように見ているのですから、わかりますよ。名前がわかれば、すぐに見つけ出せます」
「えっ!」
厳粛な空気の通夜の席で、思わず大きな声を出したが、見えない存在になった俺に気づく人はいない。
俺は無駄な時間を過ごしていたことに少し項垂れながら、死神に言った。
「名前は、里見夕奈。歳は」
「――――十七歳、女性。付き合っていた恋人ですね?」
いつの間にか死神の手には、死人のパスポートより小さな黒い手帳がひろげられており、読み上げるよう夕奈の情報を口にした。
「いませんね。ここには来ていません」
死神にそう言われ、俺は一瞬固まる。
「まさか」
もしそうなら、遅れてるのかもしれない。
そう考えた直後、死神が「ああ」と手帳に書かれている内容をさらに読み上げる。
「最期にあったのは彼女で、事故の前に喧嘩をしたんですね?」
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