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「言わなくていいよ。もう十分伝わってる」
わかってるよ。
そう伝えたくても、もう俺の声を夕奈に届けるすべはない。
時計の指針の音が進んでいく。
ふと、自分の身体をみると、手足から徐々に透けていっていた。
どうやら、滞在期限が迫っているようだ。
何も音がしないスマートフォンをあきらめるように耳元から離した夕奈に、俺はあきらめ悪く訊ねた。
「もう、大丈夫だよな?」
聞こえるわけない。でも、伝わってほしい。
そう考えながら、巻いている黄色い毛糸のマフラーを握り締めたときだった。
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