12.雨上がりのキス

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「言わなくていいよ。もう十分伝わってる」  わかってるよ。  そう伝えたくても、もう俺の声を夕奈に届けるすべはない。  時計の指針の音が進んでいく。  ふと、自分の身体をみると、手足から徐々に透けていっていた。  どうやら、滞在期限が迫っているようだ。  何も音がしないスマートフォンをあきらめるように耳元から離した夕奈に、俺はあきらめ悪く訊ねた。 「もう、大丈夫だよな?」  聞こえるわけない。でも、伝わってほしい。  そう考えながら、巻いている黄色い毛糸のマフラーを握り締めたときだった。
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