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雨上がりの空に、うっすらと虹がかかっている。
『一緒にいるときに虹を出せないかって死神に頼んだんだ』
触れられない手を握った日、夕奈にそう話したことが頭に過る。
「……始末書を書く気はないって言ってたのに」
思わず笑った俺は、一緒に虹を眺める夕奈の方にどんどん薄くなる身体を向けた。
この瞬間もあの消えた虹のように、残るだろうか。
愛の言葉はきっと無意味だから、最後に何も言わないよ。
流れた涙に目を伏せた夕奈に、消えていく身体でそっとキスをした。
何も気づいていないきみの、これからの幸せを祈るように。
《終》
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
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