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「喧嘩ってほどじゃ。夕奈は怒ったりしないし」
「そんな人間が存在すると?」
「というより、そんな笑いもしない。感情が薄いタイプ。あんたもそうじゃないの?」
俺が投げかけた質問に、死神は片眉をピクリとさせた。
「私は笑いますよ」と、死神は真顔で言う。
そんな話をしていたら、より夕奈のことが頭に浮かぶ。
「このマフラーも別れ際に、夕奈が巻いてくれて……」
巻いていた黄色い毛糸のマフラーを握りしめながら、だんだんと不安になっていた。
俺が死んだことを悲しんで泣いているのではないかと探していたが、来てもいないなんて――――……。
「夕奈は、今どこに?」
「家にいるようです」
その言葉を聞いてすぐに、俺は通夜の会場を飛び出すように駆け出した。
取り残された死神が、面倒そうな顔をして、スッと姿を消したことにも気づかずに。
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