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番外編 レオナルドとメリアーヌ③
突然の訃報が入って来た。
数時間前まで楽しく食事をし、話をしていたレオナルドが馬車の事故で亡くなったと言う。
メリアーヌは茫然自失だった。
すぐにレオナルドの元に駆けつけたかったが叶わず、やむ無く葬儀に参列する事になった。
棺の中のレオナルドは頭に包帯が巻かれていたが、まるで眠っているようだった。
触れた頬は氷のように冷たかった。
父のミランジュ伯爵様は心労で体調を崩され、弟のバルト様と妻のラズリス様が葬儀を取り仕切っていた。
事実を受け止める事が出来ず、涙を流すことも出来なかった。
侯爵家に帰ってからも、実感が沸かずただ毎日を茫然と過ごし、レオナルドからきた手紙を何度も読み返していた。
数日後、燐国の第三王子から手紙が届き、渡したい物があるので取りに来れないかと言うことだったが直ぐに返事は出来なかった。
レオナルドが亡くなって早くも三ヶ月が経とうとしていた。両親に許しを貰い燐国に向かうことにした。
燐国の第三王子はメリアーヌよりも二つ下で、穏やかな性格の人だった。
レオナルドの葬儀にも行けず、辛い思いをしているようだった。
第三王子とレオナルドの話をしている内に、止めどなく涙が溢れた。初めて泣けた。
第三王子は慰めてくれるのではなく、ただメリアーヌの知らないレオナルドの話をしてくれた。
数日間を過ごし、レオナルドが残していった物を引き取った。メリアーヌがレオナルドに出した手紙は綺麗な箱に大事にしまってあった。
箱の中に小さなジュエリーボックスが入ってあった。
箱を開けると、レオナルドの瞳の色に似たブルートパーズとアメジストの付いたブレスレットが入っていた。
第三王子は、レオナルドはわざわざ宝石商に会いに行き、石から探してブレスレットにしたんですよと言った。
メリアーヌは膝から崩れ落ち、その場で泣き崩れた。
レオナルド様、貴方から受けとりたかったわ。
更に数日が過ぎ、第三王子が
「ローズウエル嬢、レオナルド様が見られなかった物を見てみたいと思いませんか?」
「えっ」
「レオナルド様は色々な国を見たいと言っていましたよ。貴女が代わりに見てはどうですか?」
メリアーヌははっと息を飲んだ。
そうだ。それだ。
メリアーヌは第三王子にお礼を言うと、帰国の用意をし一度ベリル王国へ戻り、留学の手続きをする事にした。
勉強をやり直し、父の侯爵に認めて貰い、ベリル国王の許可も得た。
周りは新しい婚約者だの、女なのにだとか勝手な事ばかり言うが相手にしなかった。言いたい者には言わせておけばいい。
メリアーヌはレオナルドの事しか考えていなかった。
再び燐国サージェを訪れた。
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