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瑠璃色の空『プロローグ』
「美しいわ」
王都の中でも端にある小高い丘の上に建つ小さな家の庭で、ラズリスは呟いた。
夜明け前の空は瑠璃色に染まり、太陽が昇ろうとしている。
1日の中でも夜明け前の空気は新鮮な気がして、自然と背筋が伸びる。
大きく息を吸い新鮮な空気を身体一杯に満たす。
夏も終わりに近づき、湿度は感じるものの優しい風が吹き暑さは感じない。
やがて、太陽の光が帯のような放射状に広がり始めた。
ラズリスは眼下に映る景色を見て息をのみ、一瞬息が留まった。
落ち着きを取り戻し、ゆっくり息を吐きゆっくりと呼吸をした。
「本当に美しいわ」
自然と声が溢れた。
自然の雄大な景色の前で、自分の抱えている気持ちがとても小さく思えた。
本当は気がついている。心に蓋をして自分自身を騙しているのかも知れない。
今までの人生を振り返り素直に生きてみてもいいのかも知れないと思った。
自分の心に素直になろう。自分の思いのままに生きて行こう。胸にふつふつとしたものが沸き上がる。
「まあ、お嬢様。今日は早起きでいらっしゃいますね」
侍女のマリカは肌触りのよいストールをそっと肩にかけてくれた。
マリカは今でもお嬢様と呼んでくれる。今日は少し照れた。
「ふふ、ありがとう、マリカ。」
さりげない気遣いのマリカに感謝した。
「今日はドーレ様とご一緒に昼食を召し上がられるのですよね。お身体が冷えます。お部屋でお嬢様のお好きな紅茶をお入れいたしますよ」
「ええ」
ドーレ様は初めての訪問。昼食をともにすることなっていた。
この家に他人を招待するのは初めてで、しかも男性ということもあり緊張をしていた。
充分なおもてなしができればよいのだけれど。ラズリスは心の中に強く思った。
マリカの言葉に素直に従い、部屋に戻ることにした。
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