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番外編 レオナルドとメリアーヌ②
メリアーヌは驚いた。
家格下の男爵令息を庇うなんて馬鹿げていると思った。
メリアーヌは暇つぶしに図書館に行くと、レオナルドが熱心に本を読んでいた。
横を通り過ぎると、外国語の本を読んでいた。
メリアーヌは小説を読み、切りの良いところで顔を上げると、ちょうどレオナルドも読み終わったようだった。
廊下で一緒になったので、先日の食堂の騒ぎの話をしてみた。
「ごきげんよう。わたくしローズウェル侯爵家のメリアーヌと申します」
「ごきげんよう。わたしはミランジュ伯爵家のレオナルドです。どうかされましたか?」
「先日の食堂の騒ぎの事で、どうして男爵家の者をお庇いになったのかと?」
「なるほど、それはノブレス・オブリージュですね。権力は自分のために使うものでは無いのですよ。特に下らないことにはね」
「・・・あ、ありがとうございます」
レオナルドはにこやかにその場を去っていった。
メリアーヌは考えたこともなかった。
侯爵家という高位貴族の中で生まれ、与えられて当たり前のような生活を送り、我儘放題の自分の立場など。
しばらくその場で佇んでいた。
もっとレオナルドと話の続きがしたかった。
数日後読書中のレオナルドを中庭のベンチで見かけ声をかけた。
「ごきげんよう。ミランジュ様」
「やあ。ローズウェル嬢」
レオナルドは気軽に返事をしてくれた。
「貴女は学園でやりたい事はありますか?」
「まだ見つけられてなくて」
「まあそんなすぐにはね。僕はね外国に行ってみたいんです。他の国に行って色々な物がみたいんです」
夢を語るレオナルドの瞳は輝き美しかった。
「まあ素敵ですわ。わたくし応援します」
「よかったら一緒に勉強しませんか?応援だけじゃつまらないですよ」
「わたくしがご一緒しても良いのですか?」
「もちろん。興味があればの話ですが」
メリアーヌは何故か全く興味のない勉強を始めてみることにした。
最初は難しく、恥ずかしい思いをしたが、レオナルドは優しく根気強くメリアーヌに教えてくれた。
思えばメリアーヌはレオナルドに一目惚れだったのかもしれない。
一緒に勉強する内にレオナルドは、美しく素直なメリアーヌに惹かれていった。
思えば一緒に勉強しようなどと誘った事すら、自分で驚いたくらいだった。
メリアーヌはピンクに近いブロンドの髪にアメジスト色の猫目で一見キツそうだが、笑うととても愛らしい。人目を引く美しい少女だ。
二人はとても仲が良かった。
優秀な成績で人気のあり、名門伯爵家のレオナルドをローズウェル侯爵に紹介したら、婚約を許してくれた。
レオナルドは第一王子の親友であり、側近候補で大人たちの間でも有名だった。
第一王子がレオナルドを将来外交官にさせるため、燐国の留学生に任命し、結婚は少し先になるがメリアーヌは幸せだった。
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