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番外編 レオナルドとメリアーヌ④
再びやってきたサージェ王国には、春の日差しが柔らかく降り注ぎ、暖かい風と共にどこからか何の花なのか、甘い香りが微かに漂っていた。
サージェ王国の第三王子ルーメンは、メリアーヌを出迎え歓迎した。
メリアーヌは以前訪れた時よりも、活力に満ちていた。
最愛の婚約者であったレオナルドを亡くし、涙に暮れていた彼女と違って美しく、凛としたした佇まいにルーメンは見惚れてしまった。
レオナルドが愛したメリアーヌ本来の姿に戻った彼女に、ルーメンは目が離せなかった。
ルーメンはメリアーヌの美しさに戸惑いながら、なるべく以前と変わらぬ態度で接していた。
「ローズウエル嬢、よく戻って来てくれたね。以前とは見違えましたよ」
ルーメンが言うと、メリアーヌは、
「ルーメン王子様、お出迎えいただいてありがとうございます。王子様の助言がなければ、わたくし、レオナルド様との約束を忘れるところでした」
メリアーヌは左手のブレスレットに触れながら、少しうつ向き恥ずかしそうに答えた。
「レオナルド様との約束ですか?」
「はい。色々な国の色々な物を見る。わたくしレオナルド様がやりたかったことを、彼の意思を継ぎたいのです」
「それは素晴らしい考えです。わたしも協力させて頂きたいです」
「はい、ありがとうございます。レオナルド様はルーメン王子様の事を、弟のように思っていらっしゃいましたよ」
「それは光栄です。レオナルド様はとても博学で優しく尊敬出来る人でした」
「はい」
ルーメンとの話のやり取りで、メリアーヌは更に生き生きとしていた。
ローズウエル侯爵は小さいながらもサージェ王宮の近くに、メリアーヌの住む屋敷を借り上げ、使用人や護衛、生活に必要な物を揃えた。
ルーメン王子は少数の護衛を連れ、お忍びで度々メリアーヌの屋敷を訪ねていた。
二人はレオナルドの夢の話で意気投合し、次第に距離が縮まった。
「メリアーヌ嬢、貴女の心の中にレオナルド様がいても、わたしは貴女と一緒にいたい。わたしの妻は貴女以外考えられない」
ルーメンは正直に自分の思いをメリアーヌに伝えた。
「わたくしは今でもレオナルド様を愛していますし、ルーメン様のこともお慕いしています。こんなわたくしでもよろしいのでしょうか?」
「はい。レオナルド様が愛した貴女を、レオナルド様を今でも愛している貴女を、そのままの貴女をわたしは生涯かけて愛したいです」
「ありがとうございます。わたくしはルーメン様と一緒にいられてとても幸せです」
ルーメンのプロポーズを受けたメリアーヌは幸せの涙を流した。
亡きレオナルドから贈られたブレスレットには、ルーメンの瞳の色であるイエローダイヤモンドが加えられた。
サージェ王国第三王子のルーメンとローズウエル侯爵家メリアーヌは、翌年結婚し二人の女の子を授かった。公務の合間を縫って二人は諸外国の文化や芸術、社会の仕組みなどを勉強し王国のために取り入れ尽力した。
二人はサージェ王国を陰から支え、お互いに尊重し、いつまでも仲の良い夫婦として暮らした。
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