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番外編 カロリーナ目線②
カロリーナは父侯爵に言われたことが引っ掛かった。
『ローウェン様はわたくしの事をどう思っていらっしゃるのかしら?』
と考えていると、キツイ言葉を言った事やおしゃべりだったり、彼の手を握ってしまった事を思い出し、カロリーナは両手で顔を覆った。
淑女らしからぬ態度に辟易してはいないだろうか。
ローウェンとは学年も違うし会うことは少ない。会いたいけど顔を合わせたくなかった。
お昼休みの食堂でローウェンにバッタリ会ってしまった。
軽く会釈をし、そのまま目を合わせずうつ向いて通り過ぎようとしたら、
「ローズウエル様、この間は失礼いたしました。よろしければ、今度剣術の指導をお願いしてもよろしいでしょうか?」
カロリーナに照れたようすのローウェンは声をかけてくれた。
「わ、わたくしでよろしければ、いつでもお相手いたしますわ」
「ありがとうございます。レオナルド伯父様のことも教えて下さい」
カロリーナは淑女の仮面を被りその場を立ち去ったが、足は震え手には汗をかいていた。
ローウェンが声を掛けてくれたことで、カロリーナは嫌われてはいなかったのだと安心し、剣術の稽古を楽しみにしていた。
ローウェンは驚くほどの早さで、剣術の腕を上げていった。父親譲りの才能かもしれない。
ローウェンとは剣術の稽古以外でも、図書館やすれ違った廊下でも、気軽に話が出来るようになり、カロリーナはますますローウェンが好きになった。
ローウェンを好きな女子生徒たちに睨まれることもあったが、気にしないことにした。
侯爵令嬢には面と向かって嫌みも言えないのだろう。侯爵令嬢という立場が役に立った。
カロリーナはローウェンの気持ちが知りたかった。
カロリーナは思いきってローウェンにプレゼントをする事にした。
ちょうど侯爵家に来ていた出入りの商人から、万年筆を買うことができ、渡すことにした。
万年筆を渡すとローウェンは、
「ありがとうございます。大切にします」
と言って喜んでくれ、いつも制服の内ポケットに入れ、大切にしてくれている。
ローウェンが胸に手をあて、制服の内ポケットの万年筆に触れるような仕草を見るたびに、カロリーナは嬉しくなった。
ローウェンは箱いっぱいに何種類もの水色のリボンを、万年筆のお返しにと贈ってくれた。
ローウェンの瞳の色が嬉しくて、カロリーナは毎日のように髪に結んだ。
彼も目を細め喜んでくれているようだった。
ローウェンから話があると、教室からは死角になる中庭に呼び出された。
カロリーナの顔を真っ直ぐ見つめ、
「ローズウエル様、よろしければ婚約を前提に、わたしとお付き合いしていただけますか?」
ローウェンは跪きカロリーナの答えを待った。
「もちろんです。喜んでお受けいたします」
カロリーナは喜びに震えながら、精一杯の淑女の礼を返した。
抱きしめ合うわけにもいかず、ぎこちなくお互い両手を出し、ローウェンはカロリーナの両手を包み込むように優しく握り締めた。
彼の手は暖かくて大きかった。
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