番外編 侍女マリカの思い①

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番外編 侍女マリカの思い①

 ビューアル子爵家のラズリス様にお仕えして幸せだった。  ビューアル子爵家には、通いで両親が働いており、家族で子爵家の近所に住んでいた。  幼いマリカと弟は、同居する父方の祖父母が面倒をみてくれていた。  マリカは12才の時に子爵家で奉公する事になった。  その時は両親も健在で一緒に働いていたが、最初に父を、一年後に母を流行り病で喪ってしまい、すでに祖父母も亡くなっていたため、マリカは弟と二人だけになってしまった。  マリカはまだ16才だった。  三つ下の弟はまだ13才だったが、親戚の小さな商会で奉公する事になった。  マリカがお嬢様の専属侍女になったのは、マリカが16才、ラズリス様が11才の時だった。  お嬢様は聡明で努力家であった。  王都の学園に通うことも 出来たが、母親のミシェル様の影響で、奉仕活動や趣味の刺繍に興味を持ち、幼いながらも熱心に続けていた。  勉強も家庭教師がつき、真剣に授業を受け、出される課題を真面目に取り組まれていた。  他家に嫁ぐ準備にと領地経営や、貴族の家を取り仕切る家事の勉強もされていた。  計算や読み書きは得意の様だった。  急にお嬢様の縁談が決まったのは、成人して間もない17才だった。  マリカはラズリスの専属侍女になった時から、嫁ぎ先にも付いて行くつもりでいたが、一緒に行けないと知り悔しい思いをした。  近々庭師をしている一つ年上のオリバーと、結婚する事になっているマリカは、複雑な気持ちだった。  オリバーとは奉公した時から一緒に働いており、幼馴染みのような同僚であったが、数年前からお互いに異性として意識するようになり、結婚する事になった。  オリバーはビューアル子爵領から王都の子爵家へ奉公に出て来ていた。  両親は健在で子爵領で酪農の仕事をしている。  これからはお嬢様の側にはいられず、離れた所から見守っていくしかなかったマリカは、彼女に言われたこと、子爵家のご家族にしっかりお仕えすることに力を尽くそうと思った。  ミランジュ伯爵家に嫁いだお嬢様は、苦労が絶えない日々を送っていた。  マリカは何も出来ずにいる無力な自分が悔しく、せめて実家の子爵家を訪れた時くらいはお嬢様にくつろいでもらおうと思っていた。  お嬢様が伯爵家を出られると聞いて、今度は絶対にお側にいると決心し、子爵家の旦那様に覚悟を持ってお願いをしてみることにした。  旦那様は家族でお嬢様のお側にいることを快諾してくださった。
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