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番外編 若きジーン・ミランジュ①
妻エテルノの事を知ったのは、王国の一部の領地で大規模な水害があった翌年に開かれたフォーン伯爵のガーデンパーティーだった。
王国内の広範囲の領地で水害が発生し、フォーン伯爵は被害を受けた領主たちの慰労と、財力に余裕のある領主たちからの寄付を兼ね、華やかな夜会ではなく昼間に行われるガーデンパーティーの開催を買って出ていた。
ジーンは伯爵領でチャリティーを兼ねたお茶会の開催を考えていたが、ミランジュ伯爵領は王都に近いため、招待したいと思っている被害を受けた領主の負担を考え二の足を踏んでいた。
ジーンの思いを知ったフォーン伯爵は、取引仲間であるジーンに賛同し、自身の領地でガーデンパーティーの開催を引き受けることにした。
ジーンは快く引き受けてくれたフォーン伯爵に、ガーデンパーティーの費用の全額を負担することを提案した。
フォーン伯爵はジーンの申し出に最初は難色を示していたが、ガーデンパーティーの開催を合同で行う事に同意し、会場はフォーン伯爵領で行い、ミランジュ伯爵は費用を出すことを譲らなかった。
フォーン伯爵は筆頭伯爵家のミランジュ伯爵を立てる事にして、費用を出してもらうことにした。
十代で両親を亡くしたジーンは、猛勉強の末、語学力、政治力を身に付け、筆頭伯爵家の当主として申し分のない人物になっていった。
ジーンと同じ年代の令息たちとは比べ物にならない位優秀であり、近寄りがたい存在になっていた。
潤沢な財産と高位の爵位。二十代になったミランジュ伯爵家には縁談が多く寄せられ、本国のみならず他国の高位貴族などからも婚約の打診があった。
社交界での評判もよく、夜会に出れば常に妙齢の令嬢たちに囲まれていた。
ジーンは自分の地位や財産が目的の令嬢たちに囲まれる夜会が苦手だった。
両親に言い含められているのか、積極的過ぎる令嬢たちにはうんざりしていた。
夜会で寄ってくる令嬢は露出の多いドレスと香りの強い香水を身に纏い、貴族の令嬢としての品がなくまるで娼婦のようだった。
娼婦ならまだよい。庶民の彼女たちは自身の生活のために男たちに媚びを売っているのだから。
貴族の令嬢としての品位がない。
頭と尻の軽い女には興味がない。
ジーンは令嬢たちが多く参加する夜会に出ることを少しずつ減らし、貴族の令息や領主たちが多く集まる夜会のみ参加をする事にした。
ミランジュ伯爵家の当主として、いつかは結婚を考えないといけないと理解しているが、ジーンは頭を悩ませていた。
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