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番外編 若きジーン・ミランジュ②
ジーンとフォーン伯爵が計画していたチャリティーが目的のガーデンパーティーが、三ヵ月後開催されることが発表された。
ジーンの花嫁候補が選出されるのではないかと、貴族令嬢の間で評判になっていた。
この話を耳にしたジーンは呆然となったが、王都から離れた所にあるフォーン伯爵領での開催ということもあり、少しでも多くの貴族たちの感心を集め、参加をして欲しかったので敢えて噂を否定しなかった。
ガーデンパーティー日和ともいう、とても気持ちのよい晴れ間の会になった。
ジーンとフォーン伯爵は開催の挨拶をし、寄付をしてもらえる領主たちへのお礼の挨拶回りと、被害を受けた領主たちの現状を聞いていた。
会場の端で令嬢たちの人集りがあり、いつもは気にしていなかったが、この会の主催者でもあるジーンは耳を傾けていた。
「まあ貴女。よくもこんな装いで参加出来ましたわね」
「こんな装いとはどういう意味でしょうか?」
「そんなこともわからないの?今日のパーティーの主催者はミランジュ伯爵様ですのよ。おわかりかしら?」
「存じております。ミランジュ伯爵様にはとても感謝しております」
「···貴女わかってないわね。ミランジュ伯爵様の花嫁候補が決まるのですよ」
「しかし、ドレスコードには質素な装いでもよいと書かれてありました。わたくしの領地では水害の被害が酷く、領民たちに負担を掛けられないので、この衣装が精一杯の装いなのです。この衣装のデザインは古いですが、母の衣装であり素材は良いものです。決して失礼ではないと思います」
華美な装いの伯爵令嬢が質素な装いの子爵令嬢に向かって意見をしているようだった。
「失礼ながら、ミランジュ伯爵様。わたくしの発言をお許し下さい」
子爵令嬢はこちらに気がつき、隙のないカーテシーを見せた。
周りにいた者も慌てて一斉に頭を下げた。
「ああ、許そう」
「わたくしは、アドレ子爵の娘エテルノと申します。本日はご招待いただきありがとうございます。恐れながら、父とはお話をされましたでしょうか?」
「ああ、被害の事は大変だったようだな。アドレ領の事は気にかけるようにしよう」
「ありがとうございます。父からアドレ領の事をお聞きいただいたのなら、わたくしの役目は終わりましたので、これにて失礼させていただきます」
「もう帰るのか?」
「はい。要らぬ誤解があれば、ご迷惑をおかけいたしますので···」
「そうか···子爵の所に行っているとよい」
「ありがとうございます」
エテルノはカーテシーと笑顔で、ジーンの元を離れた。
「そこの令嬢。そなたのイディオ伯爵領はアドレ子爵領と同じ位の被害を受けたのではなかったのか?」
「はい。被害を受けております」
「ほう。貴女の装いを見るからに、イディオ伯爵領はまだまだ余裕があるようだな」
イディオ伯爵令嬢は真っ青な顔になり今にも倒れそうだった。
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