私、器用なのでっ!

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「うわっ! 何ですかヒガシって? この牧草を固めたみたいなやつですか? 見るからに体に悪そうですよ。こんな菓子で先輩のでっかい体が維持できるわけないじゃないですか」  リリアムが、二本の指で取り出して、手で扇いで匂いをかいでみるが、香ばしい香りがするばかりだ。 「それで問題なく維持できている。材料は干し肉とふすまと数種類の豆類だ。体に悪いものは入っていない。野菜は乾燥粉末にした錠剤のものがある。適切な量の水と流し込めば栄養的に問題ないだろう」  グリアの説明だけでリリアムの口の中は、ぱさぱさに乾いた。 「これって……美味しいですか?」 「不味くはない。(もっと)も、栄養摂取に味など関係ないだろ。これだって野営の騎士の非常食として開発しているものだ」 「えー、ダメですって! 私、食堂から何か持ってきますから、普通に食べましょうよ」  リリアムは一人で食事をするのが苦手だった。世界中の誰だってそう思っているに違いないと思いこんでいる。  食堂には、外回りの団員の為に弁当も用意されているから、どこで食事をとってもかまわないのだが、リリアムは、そういう信条に基づいて、城にいる時は必ず食堂で誰かと食べている。  技術振興部に移ってからは図書館の食堂の方が近いので、そこで食べる。  図書館の食堂は女官が多いので楽しい。騎士らしく振る舞うリリアムを、女官たちがちやほやととりまく昼食は楽しかったが、量と味は少々物足りない。 「ちょっと待っていてください。騎士棟の食堂で何か包んでもらってきます!」  リリアムは颯爽と出ていくと、しばらくして両手に抱えきれないほどの数の包み紙を持って帰ってきた。肉の多い熱々の煮込みや、油をかけて焼いたパン、芋を揚げたものなどを会議用のテーブルに並べると、グリアに勧めて、自分でもガツガツと食べ始める。 「図書館の食堂も煌びやかでいいのですけど、やっぱり騎士棟の食堂はいいですね! 肉を食べましょう! 肉!」  グリアはリリアムに勧められるままに食べ始めたが、すぐに手がとまった。 「どうしました?」 「……脂っこい」 「そうですか? じゃぁ、次は図書館の食堂からもってきましょうか?」 「そっちは、味付けが甘い」  グリアは、不満を言いながら、錠剤にした野菜の粉末らしい粒を飲み始めた。
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