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「わっがまま。私は油を吸い過ぎた芋とヤンデレと監禁以外なら何でも食べます。そんなんじゃ大きくなれませんよ――ってそれだけ体が大きければ問題ないですね!」
リリアムはゲラゲラ笑いながら部室に持ち込んだ二人分以上の昼食をあっという間に平らげた。
ついでにグリアが食べている干菓子も味見して、口の中の水分をとられ過ぎてグリアに茶を強請ることになった。
次の日、リリアムは昼になるのを見計らってグリアの前にバスケットを置いた。
「ふふふ、驚きますよ!」
覆いの布を取り去ると、油紙を飾り織りにして包んだ具入りのパンが並べてある。
「私が作りました。私、器用なのでっ!」
腕を組んで、不敵に笑う。
威張った通り、リリアムの手製の弁当はなかなかの見栄えだった。
栄養を考えたのか、何種類もの野菜と、良い焼き色の肉が挟んである。肉の脂身は切り落としてある周到さだ。
「ちょっと待っていてくださいね。暖かいスープだけ図書館の食堂でもらってきます」
「ほう、貴族の令嬢が手料理か?」
グッドヘン家ほどの身分であれば、通常なら何か良からぬものが盛られていると疑うべきだ。実際、グッドヘン家の夫人の座を狙う令嬢が、手製の焼き菓子に媚薬を練りこんできたこともあった。
偉そうにふんぞり返るリリアムを見て、グリアはあまり嫌がらずにリリアムの差し出したパンを手に取った。
「花嫁修行をさせられていたので、一通りは作れるんですよ。嫁に行く気はさらさらないですけどね。本当は野営炊飯のほうが上手いんだけどなぁ」
リリアムはそれほど楽天家ではない。事前にガーウィン家の料理人に味見をさせて問題がなかったから持ってきた。それでもグリアが肉を挟んだパンを齧るのを緊張して見守る。
いつも自信満々のリリアムにしては極めて珍しい事だった。
「それで、どうです?」
「まぁ……味が濃過ぎるな」
グリアはリリアムが持ってきた昼食を途中まで食べたが、その後に様々な色の野菜粒をざらざらと飲んだ。効率に負けた気がして、リリアムの対抗心に火がつく。
何が敗因だったのだろうかと、グリアの食べかけを奪って自分でも食べてみる。騎士棟の食堂よりは薄味で、油も控えめだ。
「味、濃いですか? そんなことないですよ、美味しいじゃないですか! どんだけ薄味なんですか」
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