君だけが頼りなのだ

4/7
前へ
/230ページ
次へ
 三日の仕事を終え、グリアのところに戻ってきたリリアムはグリアが残しておいた仕事を片っ端から片付けていく。グリアに休憩時間を作るつもりなのだ。  何をしたくて休憩時間を作っているのかは分かっているが、グリアとしては残しておいた仕事が捗るのでリリアムのやる気を削ぐ気はない。  リリアムは脳筋に見えて頭が回る。目もいいから図書館で上の方にある本もすぐ見つけてくる。多少無茶をしても頑丈だ。資料の整理も独自の価値観でさっさと済ませる。手足として、リリアムはあまりにも使い勝手が良かった。  いつもなら携帯用粉末茶で休憩するところだが、リリアムが張り切って茶葉から入れている。茶器は客が来る時にしか出してこないので、薬品の実験にも使用されるガラス瓶で茶を入れて、飾り気のない茶碗に注ぐ。 「そういえば、ガーウィン教官が部室に来られた」  香りよく入れたお茶をすすりながら、リリアムの留守中にウィリアムがやってきた話を伝えた。  それを聞いて、それまで機嫌良くしていたリリアムが、親の仇を見るような形相でグリアの方を見る。生きている実の父親の話題だというのに、おだやかではない。 「あの糞爺(クソジジイ)が、なんだってこんなところへ?」  茶碗を置くと、ソファにどんと座って長い足を組み上げる。尊大な態度でグリアの説明を待っている。 「お前を娶れとさ」  要約して伝えると、リリアムが顔をゆがませる。 「はっ、耄碌(もうろく)してますね。先輩に迷惑かけるなんて、最低! 今度来たらリリアムは死にましたって伝えてください」  グリアはリリアムの親子関係に口を挟む気は一切ないが、どうやってリリアムがウィリアムを討ち取ったのかについては少し興味があった。 「毎日家に帰ってくる娘が、死にましたも何もあるか。安心しろ、俺は不能だから結婚はできないと言っておいた」  リリアムは、グリアの言ったことに反駁する。リリアムは自分が価値があると思ってるものを貶されるのが嫌いだ。 「え、先輩は不能じゃないですよ! 超有能じゃないですか!」
/230ページ

最初のコメントを投稿しよう!

39人が本棚に入れています
本棚に追加