君だけが頼りなのだ

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「何を基準に言っているんだ。不能でも有能でも俺に嫁ぐ娘は不憫だ。縁談は断ることにしている」 「それって、やっぱり、貫き殺されちゃうってことですか?」 「いや、俺には薬がある。滅多なことにはなるまい。それよりもグッドヘン家は姑と出戻りの叔母が極悪でな。小姑までいる。俺と結婚なんかしたら、妻が気を病んで身を投げるくらいの事件がおきるだろう。こちらが上の婚姻だ、実家に逃げ帰ることもできまい」  グッドヘン家は名家だ。女系の強い家で、夫は早逝するか離縁されるかだ。  そんな家に嫁に来るなんて死ぬ為に来るようなものだとグリアは言う。 「うわぁ、それは可哀想。嫁姑問題ですね!」 「俺だって、家が面倒でこうして寮で暮らしている」 「先輩も大変なんですね。さすがにお母上と叔母上じゃ、私が糞爺にしたみたいに半殺しの目に合わせて言うことをきかせるわけにはいかないか」  不穏な言葉が出てきて、グリアの好奇心が動き出す。リリアムがウィリアムを倒した噂は本当だろうか。 「おまえ、教官にそんなことをしたのか?」  気になって尋ねると、リリアムは嬉しそうに笑う。 「騎士にはしない、嫁に行けですよ、あったまにきちゃって。私はまっとうに勝負したんですよ。それなのに、あの爺、勝てないと分かると卑怯な手を使ってきて! 返り討ちにしてやりました……うふふ」  小首をかしげて笑うが、相当険悪な喧嘩をしたのだろう。帰り際のウィリアムの力強い握手を思い出して、リリアムはアレを凌ぐのかと驚く。 「ガーウィン教官はかなりの腕前だったとおもうが?」 「私の方がすごいんですよ! 糞爺の得意技をつかって叩き潰したら、大人しくなっちゃって……へへへ」  朗らかなリリアムの笑みは、残虐にもみえる。  リリアムは屈託のない性格だが、勝利に対しての執着は強い。ウィリアムを打ち負かす為に、リリアムだって相当な手段をとったはずなのだ。 「そんなことより……三日も禁欲状態で、そっちの方が死にそうでした。むこうの王子が女の子呼んで酒盛りなんかしてて、うちの王子たちが参加しないように見張らなければならなくて。こっちはムラムラを発散出来ずにいるのに、王子たちは女の子と遊びたがるし、腹が立って当たり散らしちゃいましたよ。まあ、ニコラ隊長もそんな感じだったかな」 「最近のニコラは容赦ないからな」
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