小遣いをやるから

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 薄紙で作られた花弁が誘うように揺れているのを見たリリアムは、急に楽しみになって、経年で少し表面が削れた木製の階段を速足で駆け上がった。  実際、遊びは楽しかった。  自分がされたことを思い出して、相手に潮を吹かせてみたりして、自信を得たところまではすごく楽しかった。  しかし、触ってもらう番になると、満足感が足りない。相手の献身を褒め、甘い雰囲気になるものの、何か手っ取り早く突っ込めるものはないかとまわりを見渡す始末。  結局グリアの指ほど満足できるものがないと気が付き、愕然とした。  さらに悪いことに、集中しようと目を閉じても、実験動物を観察するように見下ろすグリアの顔が脳裏にチラついて、酒場の娘の華奢な指に集中できない。 「ごめん、実はもうすぐ月のものが来ちゃいそうで、少し感覚が鈍くてね。代わりにもう一度君を愛させてくれないか……」  リリアムは甘く告げて、娘に口付けると、優しく押し倒す。 どろどろに蕩けた甘い雰囲気のまま、リリアムは宣言通り娘に奉仕し尽くした。  相手は面白いように喘ぐ。体を紅潮させて、絶頂に体を震わせる。 (いいなぁ。私もイきたいんだけど……)  満たされない腹いせのように、グリアにされたかったことを娘にしてやると、高く喘ぐ。 (まぁ……これはこれでいいものだけど)  娘を何度も満足させて、自分では一度も満足できないまま、酒場を後にしたリリアムは、道端で頭を抱えてしゃがみこんだ。 「……あれ、今までどうしてたんだっけ?」 *  リリアムは次の日、朝早く部室に来ると、切羽詰まった顔でグリアに詰め寄る。 「先輩、ちょっと急用で、今夜できますか? 薬を抜いといてください。避妊具は用意しておきますから」 「ここでか?」  目が血走ったリリアムの様子に少し怯んだが、グリアは駄目だとは言わなかった。  本当は、グッドヘン家の長男が女遊びに興味があるとなれば大騒ぎになる。自分が遊び相手だと名乗る女たちがグッドヘン家に殺到することだろう。  グリアがリリアムを例外とするのは、何度か発散を手伝ってやって、どうやらリリアムが単純に性欲を持て余しているだけだとわかってきたからだ。発散させてやることに、医療行為を行っているような、同情心すら感じる。 「ここじゃ、さすがにまずいですよね。酒屋の上に部屋を借りておきます」
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