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協力してくださいよ*
仕事の密談で使うといって確保した酒屋の二階の部屋に着くと、グリアはベッドに腰かけて本を読んでいた。
「先輩、お昼、ちゃんと食べました?」
「ああ、食べた。脂身は残したがな」
「あそこが一番美味しいのに」
本から目を離すことなく雑談に応じるグリアは、いつもと変わった様子はない。街をうろつくのにふさわしい気軽な服装をしている。公爵家の王子様の癖に遊び慣れているのだなと、リリアムは意外に思った。
「薬は効いたか?」
「昼まで持たなくて、昼前に飲みきりました」
「なら、もう効果が切れる頃だな。こっちも効果が切れた頃合いだ」
グリアは懐中時計を取り出して確認すると、かちりと音を立てて蓋を閉める。
「この薬、材料は何ですか? 体に悪かったりしません?」
減退薬は、どす黒いだけではなくて味も最悪だった。丸呑みしなければとても口の中に入れておけない。うっかり噛むと妙な粘りもある。
「本能を抑えて理性の働きを優勢にするだけの薬だ。仕事が捗っただろ? 材料は豆や魚、あとは薬草だな。毎日摂取しても悪いことはない」
リリアムの仕事がはかどったのは事実だった。薬が効いたかのかどうかはよくわからないが、グリアと遊ぶことを想像して過ごしたので、始終機嫌よくいられた。
「材料だけ聞くと健康に良さそうですね。この後に先輩の巨根と遊ぶんだなって思ったら、一日頑張れましたよ」
ぐっと拳を握るリリアムには、執念のような何かが滾っていた。
「……薬、効いてなかったんだな。男性の勃起の抑制が目的の薬だし、まぁ、そんなものか。そもそも、女性で効果を試したことはなかった。丁度いい、明日も追加で丸薬をやるから、しばらく飲み続けて体調を報告しろ」
「いいですけど、味が悪すぎます。糖衣にしてもらえません?」
グリアは本を閉じると、鞄の中にしまう。
「お前と寝たと噂がたったら面倒事になる。早く済ませて帰れ。俺も終わったら寮に帰る」
グッドヘン家のような王家に近い名家は、自由恋愛を楽しむのには向いていない。遊びで胤を撒くと、血で血を洗う騒動に発展することだってある。グリアは徒に国を混乱させる者を誕生させるつもりはさらさらなかった。
「賛成です。さっそく、始めましょう。避妊具は持ってきましたよ。馬とでも寝るのかと笑われましたけど」
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