白い世界とシロ

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アルバイトに行き始めて一ヶ月経つ。 鈴原さんのデータ入力の早さは、日に日に早くなっていった。 「高野君がコツ教えてくれたおかげだよー」 「いえ、鈴原さんが毎日頑張ったからですよ」 休憩時間に鈴原さんと会話することが多くなった。 鈴原さんは俺より二つ年上で、たまに語尾を伸ばす癖がある。 それが少し子供っぽくて可愛らしい。 「ねぇねぇ高野君、今日は仕事終わったら夕食食べに行かない?」 「え、えーと……」 突然の誘いにどうしようか悩んでしまう。 人混みの中へ行くのは、まだ少し抵抗がある。 「遠くまで行かないから安心して。人通りが少ない所にいいお店があるの」 俺の心を見透かしたかのように鈴原さんは言った。 「じゃあ……行きます」 断るのも申し訳ないので、行くことにした。
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