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いくら清潔に掃除されているとはいえ、床に両手と額をつけるというのは衛生的にも良くないだろうし、何よりずっと気になっていた異性が亀のように身体を丸めた姿は見ていて辛い。
「だから……」
どれだけ言葉を尽くしてもわかってもらえず、菜乃花は途方に暮れた。
遡ること十分前。
食堂へ向かうべく階段を下りていた菜乃花は、後ろから猛烈な勢いで駆け下りてきた千影と肩がぶつかって転落し、右手首を捻った。
階段の最上段から転落したのではなく、残りあと五段という高さで落ちたからこの程度の怪我で済んだ。
とっさに両腕で庇ったので頭は打ってないし、意識もはっきりしているし、負った怪我は重傷というほどでもない――のだが。
「どうぞ遠慮なく処してください」
厳罰を望んでいるらしく、千影は平伏したままそう言った。
「処す!?」
およそ日常生活では使うことのない物騒な言葉に菜乃花はびっくり仰天した。
「何を言いだすの!? 本当に大丈夫だって! 見た目がちょっと大げさなだけで、全治二週間だって言われたし! ですよね、梶浦先生!?」
助けを求めて、白衣を着た男性に目を向ける。
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