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1st
歩いても、歩いても、じめじめとした薄暗い廊下が続いている。
あぁ………またここだ…。
ここ一ヶ月私、幽々院 美奈は同じような夢を見続けている。
その内容は、じめじめとした薄暗い廊下を永遠に歩き続けている夢。
夢と認識していても自分勝手にすることはできない所謂”悪夢”。
見始めた頃は恐怖が私を取り巻いていたが、最近はそんなモノ無くなってきている。
チリリリリリ!
大きな目覚まし時計の音で目覚める。本棚とベッド、そして机にノートパソコンがあるだけの質素な部屋。女子らしさのある物は一切無く、男子の部屋と言われても納得してしまうだろう。
現在時刻は午前9時、外は雨が降っており、部屋の中は薄暗い。
「はぁ…またあの夢。」
大きく溜息をつく、正直あの夢には飽き飽きしているのだ。何も変化のない暗いだけの廊下を歩く、ただそれだけの夢。誰でも一ヶ月も連続でこんな夢を見ていたら飽きるに決まっている。
夢は新鮮だからこそ良いものなのだ、それが明晰夢であっても悪夢であっても。
ベッドからゆっくりと起きた私は、いつものルーティーンをこなす。誰もいない屋内を歩き、キッチンへと到着。お湯を沸かし、珈琲を作る。
手の込んでいない簡素な珈琲だ。だがその素朴な味が私は好きなのだ。
少しの間珈琲を楽しんだ後、半分程に削れている一斤のパンを2度切り分ける。
表面にバターを塗り、砂糖を少々。これをトースターで焼き上げる。
トースターでパンが焼き上がるのを待つ間、パンにつける用の蜂蜜を取り出しておく。
これがいつものルーティーン、ここに最近一ヶ月間は追加でpcで調べ物をしている。いつも見る悪夢についてだ。
ネット掲示板や夢に関する資料を漁る。
その中に一つ、気になる記事があった。
「………無意識下の同調…。シンクロニシティってヤツかな?」
その記事には人は皆、無意識下で同調し続けているのだ。と記されている、まぁつまり俗に言うシンクロニシティというものについての記事なのだが…。妙に引っかかる。記事を読み漁っていると、鼻に焦げた匂いがツンと突く。
「あっ、やっば!」
見事に焦げてしまった。
「ちょっとお高いパンだったのに…。」
勿体なさそうに捨て、新しいパンを焼く。
無事にパンが焼けるのを見届け、食べ終わった後に記事を再度確認する。
「あれ?」
先程の記事ではない、明らかに関係の無い記事だ。
「変な所押しちゃったかな…?」
私は少し不思議に思いながらも履歴を遡る。
「あっれぇ…?」
いくら遡っても先程の記事が見つからない。
「おかしいなぁ………まぁいっか。」
このとき、私は別に気にしていなかった。だが、この記事が私の運命を握っていたなんて………思いもしないだろう。
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