迷い猫

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迷い猫

私は先程の変な男のせいで、無事迷子になってしまった。 今は目の前の紙の地図が全く理解できずに立ち尽くしている。 「こんなに難解なモノを書くだなんて、馬鹿なんじゃないかしら。こういうときは地元の人に聞くに限るわね。」 周囲を見渡し、杖をついたおじいさんを見つける。 「おじいちゃん、少し聞きたいことがあるのだけれど。」 「えぇ?なんだって?」 ぷるぷる震え、今にも倒れそうなおじいちゃんが答える。 「緑、奥、高、校、って知ってますか!!!」 私は限界まで大声で言った。 「あぁ〜分かった分かった、耳が悪くてのぉ…。あっちじゃよ、あっち。」 と、指を指すおじいちゃん。 「ありがとう名も知らぬおじいちゃん、貴方のことは忘れないわ。」 と呟きながら、歩き去って行く私であった。 そして私が丁度おじいちゃんの声が聞こえない程度離れた所で、おじいちゃんが一言。 「こんな朝早くから霊園だなんて………きっと死んでしまった家族に供え物でも贈るのじゃろう。最近の娘は良い子じゃのぉ〜。」 「ふむ、騙されたわね。」 私は霊園で立ち尽くしていた。 「おじいちゃん改めジジイには後で鉄拳制裁を食らわせてやるわ。」 ※絶対にいけません 「はっ、こんな紙の地図じゃなくても私には現代科学の神器スマホがあるじゃない。」 ぽちぽちといじり、最適な地図の形を探す。 「………ふむ、全く分からないわね。」 私は顎に手を当てながら首をかしげる。一応言っておくがこれは癖であり、別にぶりっ子している訳ではない。 「取り敢えずあっちに行ってみましょうか。」 私は難しいことを考えるのをやめた。 適当に進んでいると、同じ制服の娘が視界に映った。これはチャンスだ。 「そこの貴方ー!」 呼びかけると彼女は振り向いた。 クリーム色の肩まで伸びた髪の毛、150cm程の身長。そして何より目につくのは頭の上にある謎の結び方をされたリボンだろう。 「なぁんでしょぉかぁ〜。」 ねっとりとした返答だった。 取り敢えず私は走って来た道へ逃げた。 ダっダっダっ…。 背後から明らかに私より早い足音が聞こえる。ドンドン近づいてくる。 そしてついには襟元を掴まれる。 「ぐえっ。」 「なぁんで逃げたのですかぁ〜?」 「はぁはぁ…明らかに貴方から関わるべきではない人間のオーラを感じたからよ…。」 そう、正直別に喋り方は問題ではない、問題なのは目だ。目が2、3人殺してそうな目をしている。 「もぉしかして〜この目のことですかぁ〜?」 「そうよ。」 「こぉれは〜、生まれつきなのですよぉ〜。」 「そう、殺人鬼じゃなくて助かったわ。」 それは仕方ないわね。 ………本音と建前が逆になってしまった。 「殺人鬼なんてぇ〜御冗談を〜。」 「まぁここらでアンケートでも取れば一発で分かるでしょうね。」 目の前の殺人鬼は思い出したかのように私に問いてくる。 「そういえばぁ〜貴方緑奥高校の方ですよねぇ〜?もう入学式は終わってしますよぉ〜?」 終わった。殺人鬼が自ら私が殺人鬼です!と名乗り出る訳がない、高校がバレた以上殺される前に殺すしか…ッ! 「まぁ〜何か事情があるんでしょう〜、一緒に行きませんかぁ〜?」 「あら、嬉しいわ。迷っていたの。」 どうやら私の目は盲目だったようだ、殺人鬼などではない、この人は救世主だ。 「それはぁ良かったぁ〜、私は栗原 詩織(くりはら しおり)と申します〜。」 「私は黒音 リリ、今後ともよろしくね。」 私はこの救世主に導かれ、無事学校へ辿り着いた。 「栗原さん、ありがとうね。」 「いえいえ〜、困った時はお互い様って言うじゃない〜?」 「ふふ、その通りね。」 私は救世主と別れ、花の咲く中庭を通過する。 すると…ぺちっ。 何かが頭に落ちてきた。 私はそっとそれを手に取り見てみる。 ゴ◯ブリだ。 私の思考は完全に停止した。 何故か地味に濡れており、体液が出ていると確認できる。 私はこんなことで絶叫するような女子ではない。 落ち着いて、よく見ると精巧なおもちゃであり、ドッキリ道具だと分かる。 理解した瞬間再起動した私は校舎を見上げ、何処から落下してきたものなのか特定しようとする。 窓は一箇所だけ開いていた、二階だ。 私は不敵な笑みを浮かべる。 「ははは…そう………そうなのね………ふふふ………。」 「ぶっ◯す!!!」 女子が言ってはいけない言葉と同時にゴ◯ブリのおもちゃを握り潰し、私は二階へ向かって走りだした。
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