総天然色!「きのこ人間の恐怖」鑑賞記

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 最後っ屁とばかりにジャアアーンと盛り上がったメインタイトルが余韻を引きずりながら消えていく中、監督名を最後にクレジットタイトルも終わり、そのまま画面は暗転。やがて激しい風雨の音が聞こえてくる。と突然、お定まりの雷鳴が轟き渡り、鉄格子のはまった窓が白く輝く。  カメラは招かれざる闖入者の、おずおずとした視線を真似て、雷光に照らし出された、古びた洋室の内部を舐めていく。年代物には違いない、一見豪華だが手入れのされていない、埃まみれ蜘蛛の巣まみれの、薄気味の悪い調度が仄かなランプの灯火に浮かび上がる。  やがて、カメラは部屋の隅の机に両肘を付いた、若い男の後ろ姿を捕える。背後からすり寄るカメラワークはあざとく、男の顔と手が映りそうになると、わざとらしく避ける。  と、ここで男は立ち上がる。画面に映るのは男の酔っているような足取りだけだが、最後に男の視線に切り替わったカメラが、壁に掛かった姿見を映し出す。カメラ=視線は怯えたようにノロノロと上に向かい、ついに鏡に映った男の顔を捕えようとした、その刹那――。  ガラガラ、ガッシャーンと雷鳴が轟き渡り、それに男の絶叫が被さる。  カメラは切り替わって、稲光が産み出した男の影だけを映し出す。男は鏡から後ずさり、嘆き悲しむ者のように、両手を頭上にかざす。  風雨と雷鳴と、男の絶叫が続く中、画面はゆっくりとフェードアウトしていく。
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